太陽の恵みを受け自然まかせで育った野菜や果物は、しっかりと素材の味がすると言われています。人工的に温度や水分を調節するより、植物本来の力で強く育つイメージがありますね。
野菜の栽培方法はいくつかありますが、この記事では今注目の露地栽培を家庭菜園初心者向けに詳しくご紹介します。
露地栽培の特徴やメリット・デメリット、家庭菜園でも簡単に育つ野菜や果物までわかりやすくまとめました。是非参考にしてください。
露地栽培とは
「露地栽培」と聞けば屋外で育てる栽培方法だろうと何となくイメージは出来るでしょう。野菜売り場にも時折「露地物」と表記した野菜が並んでいますね。
露地栽培とは屋外の自然な気候条件で人工的な設備を使用せず作物を栽培することです。自然に逆らわず、植物の生きる力に任せた栽培方法ですから、旬の野菜がおいしく育ちますよ。
栽培方法と特徴
露地栽培の特徴は野外(露天)の畑でビニールなどの保護材を一切使用せず、自然な環境で作物を育てるところでしょう。設備コストや手間も少なく、広い畑も有効に活用できます。
栽培方法はとてもシンプルです。人工的な管理をしない分、季節ごとの作物を植え付け自然な生育を促します。
ただ植えて待つだけという訳ではありません。作物に合わせた土作りや雑草・害虫駆除など葉や実に栄養を集中させるための管理は必要です。
- 土作り・・・肥料を混ぜ作物に合う土質を作ります。
- 種まき・植え付け・・・野菜ごとに最適な時期に一定の間隔を空けて植え付けます。
- 水やり・・・基本的には天気まかせですが、夏場の乾燥時は水やりも必要です。
- 間引き・剪定・・・野菜の栄養を集中させ、蒸れによる病気を予防します。
- 追肥・・・生育期の追肥が株の栄養を充実させます。
- 収穫・・・ベストなタイミングで収穫しましょう。
特に大事なポイントは種まき後発芽するまでの間と、苗を植え付けた後しっかり根を張るまで。この期間は土からの栄養がしっかり吸収出来ませんから水やりや観察が必要です。
さらに生育途中で病害虫の被害に合わないように雑草を刈り、茂った株の間引きも重要になります。整頓されない畑は虫の絶好の住処となり、蒸れはカビが発生しやすく病原菌を呼び寄せます。
施設栽培(ハウス栽培)との違い
野菜や果物の栽培方法は露地栽培のほかに施設栽培があります。ビニールハウスは簡易的なものも多く、家庭菜園にも応用しやすいでしょう。
もっと本格的な施設栽培となるとガラス張りのハウス栽培や大きくテント張りしたビニールハウスなどもありますね。多くの栽培農家は施設栽培を取り入れています。
露地栽培との違いは品質と収穫量です。気候に左右されることなく温度管理や水やりが出来ますから、販売基準を満たす野菜が一定量収穫できます。
露地栽培の対義語
露地栽培の対義語は「温室栽培」です。収穫を見込んである程度過保護に栽培する方法です。
寒暖差や害虫に弱い作物、または季節をずらして栽培したい場合は温室栽培でなければ育てられませんね。
露地栽培で育てるメリット・デメリット
地植えできる土地があるなら、すぐにでも始められるのが露地栽培です。ただ単純に簡単そうだからと始めても思うように野菜が育たない可能性もあります。
露地栽培ならではのメリットやデメリットも確認しておきましょう。
露地栽培のメリット
露地栽培のメリットは何と言っても太陽光と自然な環境から得られる栄養素でしょう。
植物は置かれた環境の中で葉や実に養分を蓄えます。厳しい環境下に置かれて糖分や養分を増す野菜も多く、上手に栽培できればより濃い味を楽しめます。
また瑞々しさと豊かな香りは自然の中で育まれてこそ。旬の野菜をおいしくいただくには露地栽培が最適でしょう。
ほかにもコスト面や手間がかからない分、広範囲での栽培も可能です。
- 野菜の味が濃くや香りが豊か
- 低コスト
- 広い畑が有効に使える
露地栽培のデメリット
投資が少なくおいしい野菜が育つ露地栽培ですが、デメリットもあります。自然の中で育てる分、環境が生育を大きく左右します。
また栽培できる野菜に限りがある点もデメリットですね。
- 台風や長雨などの悪天候による影響
- 害虫被害
- 旬の作物しか育てられない
露地栽培におすすめの野菜
家庭菜園で野菜作りを楽しむなら旬のものを選びたいですね。低コストで自宅で食べる分だけを栽培するなら、露地栽培でもデメリットは気にならないでしょう。
露地栽培におすすめの野菜や果物をご紹介します。
春植え野菜・果物
- トマト
- キュウリ
- ナス
- ピーマン
- 枝豆
- ゴーヤ
- トウモロコシ
- チンゲンサイ
- スイカ
- ブルーベリー
秋植え野菜・果物
- キャベツ
- レタス
- カブ
- 白菜
- ほうれん草
- みつ葉
- ルッコラ
- 葉ネギ
- 玉ねぎ
- ニンニク
- いちご
露地栽培でトマトを育てる方法
家庭菜園で育てすさNO,1の野菜と言えばトマトです。スーパーなどでは1年中出回っていますが、夏の太陽光を浴びて育ったトマトは甘さも段違いです。
それが自分で育てたトマトならばまた格別ですね。露地栽培でトマトを育てる方法をご紹介しましょう。
初心者がトマトを育てるなら苗を購入して植え付けるのがおすすめです。時期は5月、ゴールデンウィークを活用しましょう。
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植え付ける2週間ほど前に苦土石灰(くどせっかい)を土に混ぜ土質を整えます。その1週間後に堆肥と元肥をまきよく耕しましょう。 |
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水はけを良くし効率良く肥料をまくために幅100~120cm、高さ20cmの畝を作ります。 |
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苗がすっぽり入るようにポット鉢と同じ大きさの植え穴をあけます。株間は40cmほどあけます。穴の状態でしっかり水を注ぎ、植え付けた後もたっぷりと水やりをしましょう。 |
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植え付け後トマトの苗が風で倒れないように支柱を立てます。根を傷つけないよう苗に対して斜めにさし、紐で8の字に結びましょう。 |
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露地栽培でもしっかり根付くまでは水やりをします。2週間程度は土が乾いたらたっぷりと水やりをしましょう。その後は天気まかせで問題ありません。 |
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栄養が実に集中するように最も上の花房から2~3枚の葉を残し摘芯します。同じ理由でひとつの苗から採れる実が4~5個になるよう摘果もしましょう。わき芽もすべて取り除きます。 |
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実が付き始めたら追肥をします。化成肥料を株間にまきましょう。 |
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トマトは実が赤くなりガクが反り返ったら収穫の合図です。ハサミを使って収穫しましょう。 |
摘芯・摘果とは
摘芯は新芽(茎の先端)を摘み取ることです。植物は上へ上へと伸びて成長しますが縦ではなく横に、側芽を育てるように促すと花の付きも良くなります。
摘果は実の栄養が分散されたり株を弱らせたりしないためにある程度間引き、収穫する実の品質を向上させます。
露地栽培でいちごを育てる方法
春に植えて秋に収穫する野菜や果物は多いですが、秋植えで冬に収穫を狙うならいちごが人気です。寒さに強く自然な風で受粉し結実しますから、家庭菜園なら露地栽培が最適です。
10~11月になるとホームセンターや園芸店でも苗が出回ります。露地栽培でいちご作りに挑戦してみましょう。
土作り | 植え付ける2週間ほど前に苦土石灰(くどせっかい)を土に混ぜ土質を整えます。その1週間後に堆肥と元肥をまきよく耕しましょう。 |
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畝作り | 幅60cm、高さ10cmの畝を作ります。 |
植え付け | 株間を30㎝あけて植え付けます。ランナーと呼ばれる茎が伸びている方とは反対側に実がなりますから、向きを揃えて植えるようにしましょう。 |
水やり | 植え付け後はたっぷり水やりをしますが、その後は土の表面が乾いたら与えます。 |
摘葉・摘花 | 冬の間に枯れた葉や寒い時期に咲いた花は摘み取ります。花は実になるため摘んではいけないように思われますが、早くに咲いた花は実になりません。子株を作るランナーも同様に摘み取ります。 |
追肥 | 2月下旬から花の咲き始めまでに化成肥料を与えます。 |
人工受粉 | 自然任せでも受粉しますが、確実に結実させるなら柔らかい筆や綿棒を使って人工受粉しましょう。 |
収穫 | 開花後30~40日で収穫できる大きさまで育ちます。ヘタ近くをハサミで切って収穫します。 |
ランナーとは
いちごは親株からツル状の茎(ランナー)が伸び子株を作ります。1株から10本程度のランナーが伸びますが、状態の良い1本を翌年のために残しそれ以外は剪定します。子株を植え付ける時の支えや実がなる面の目安になるため、苗で販売されている時も3~4cmほどのランナーが残されています。
露地栽培の栽培方法のまとめ
日光と自然な風も味方につけて野菜を栽培するのが露地栽培の良いところです。ただ気候の変化に逆らえない点は覚悟が必要ですね。
- 旬の野菜や果物を自分で育てたい
- 設備投資は考えていない
- 趣味で家庭菜園を楽しみたい
上記のような方には是非おすすめです。家族やペットとはまた違った愛情を注げる存在になりますよ。