ヌルヌルとゆっくり動くナメクジ。ナメクジは多湿を好み、花や野菜など、主に地上部を食害していきます。
今回は、菜園を荒らす不快害虫であるナメクジの駆除の仕方、対策方法などについてご紹介します。
ナメクジの生体と特徴について
ナメクジは陸地に生息する軟体動物の一種で、殻が退化している雑食性生物です。頭部から細長い触角が突き出ており、先端に黒く小さな目玉が付いています。
成虫の身体の長さは約5~6cmほどで、寿命は約2~3年です。湿気を好み、プランターの下や菜園にある庭石の下でひっそりと暮らしています。
ナメクジは雑食性のため、花や野菜、果実も食害します。ナメクジの口には、タコ・イカ・貝類などの軟体動物特有の歯舌(しぜつ)と呼ばれる、おろし金状の歯が規則正しく並んでいます。
この歯舌を前後に動かして、花や野菜を削り取るようにして食べていくのです。ナメクジは筋肉を収縮すると、粘液を出す性質です。そのため、ナメクジが通った後には、テカテカと光る、液体に近い粘液が残るのです。
寄生虫に注意
一見害はなさそうですが、ナメクジには広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)という寄生虫が存在します。
葉野菜に付着していたナメクジに気付かず、誤って食べてしまい、死亡した人が複数いたというニュースも発表されました。
この寄生虫は北海道~沖縄と全国で発見されており、日本では特に沖縄での感染率が多いと言われています。ナメクジは素手でも触らない方が良いでしょう。
触ってしまった場合は、必ず手洗いをしてください。ナメクジが這った部分も注意が必要です。
ナメクジの種類
ナメクジ【ナメクジ科】
人家~森林まで、幅広く全国に生息している一般的な種類です。体長は約8cmほどで、触角は黒色。体は薄い灰色、背中に2~3本の黒い線が入っています。
山ナメクジ【ナメクジ科】
日本原産のナメクジの一種で、本州を始め、九州や四国の山間部に多く生息しています。体長は13~16cmと大型で、体の色は茶褐色をしており、黒褐色の縞模様が入っています。キノコ類が好物のため、山間部の菜園には出没することもあるそうです。
チャコウラナメクジ【コウラナメクジ科】
チャコウラナメクジはヨーロッパ原産の外来種ナメクジですが、日本全国どこでも見られます。
体長は約5cmで、前方の背面が甲羅のような見た目をしています。この甲羅には灰黒色の2本のスジ模様が入っています。
ノハラナメクジ【コウラナメクジ科】
ノハラナメクジも外来種ですが、日本全国の牧草地や公園や道路沿いなど、どこでも生息しています。
体長は20~30mmと小柄で、体の表面は濃紫色、黒色の網模様が入っています。新鮮な葉野菜や果物、種子を好む雑食性のナメクジです。
イボイボナメクジ【ホソアシヒダナメクジ科】
イボイボナメクジは、本州から四国、九州から沖縄にかけて生息している種類です。体長は25~35mmと小さく、枯葉の下や石の下などに多く見られます。
体には無数のイボがあります。イボイボナメクジは肉食のため、小川に住むタニシなどを好んで食します。
ナメクジの繁殖や産卵について
ナメクジは雌雄同体生物のため、体の中に卵子も精子も持っています。受精すると二個体が卵を産むことも可能です。
また、自家受精(一匹で受精)することもあります。過ごしやすい5月から冬前の11月の間に、およそ20~60個もの卵を産卵します。
ナメクジの寿命は2~3年ですが、一匹のナメクジが一生のうちに産卵する卵の数は、約300個だと言われています。
ナメクジの卵は、小さい透明のビーズのような見た目です。プランターの裏や石の下、土の中で見られることもありますので、見つけ次第駆除しましょう。
ナメクジが好む主な野菜・花
- 花…バラ・マリーゴールド・パンジー・朝顔・サルビア・ペチュニアなど
- 野菜…レタス・きゅうり・白菜・ナス・ほうれん草・苺・アスパラガスなど
- 果物…イチジク・みかんなど
- その他…苔類・多肉植物・サボテンなど
無農薬の駆除・予防方法
使用法によっては植物に被害を及ぼしてしまう可能性もありますので、しっかりと確認してください。
割りばしやピンセットで捕殺
原始的な方法ですが、最も確実に退治できます。寄生虫からの感染を防ぐため、割りばしや、100均で購入したピンセットなどを使用して、ナメクジを挟んで捕まえましょう。
少々気の毒に思うかもしれませんが、相手は不快害虫です。捕まえたナメクジは水に浸けたり、熱湯をかけて退治しましょう。
ナメクジは、水に浸けると溺死します。熱湯をかける場合は、育成中の植物が傷むことを防ぐため、離れた場所で行ってくださいね。
ナメクジに塩は効く?
ナメクジに塩をかけても駆除ができそうですが、体内の水分がどんどん抜けて行くだけで、死にはしません。
“塩害”といって、塩は植物にも悪影響を及ぼしてしまうので、ナメクジ駆除に塩を使わない方が良いでしょう。
米ぬか水(手作りの罠)
ナメクジは嗅覚で動く性質です。米ぬかの甘い香りに誘われてやってきます。底の深い容器の中に、水と米ぬかを溶いた米ぬか水を作って、被害場所周辺に置いておきましょう。
米ぬかには油分が含まれています。うっかり米ぬか水に落ちてしまったナメクジにも油分が付着し、容器を上れずに溺死してしまいます。
米ぬかは精米所で無料で手に入れることができるため、お財布にも環境にも優しく一石二鳥ですね。
ビール(手作りの罠)
ナメクジはビールの香りを好むと言われています。底の深い容器にビールの飲み残しを入れ、被害場所周辺に置いておきましょう。
ビールの香りにつられてやってきたナメクジは溺れ死んでしまいます。浅い容器を選んだり、ビールの量が少なかったりすると、ナメクジが脱出してしまうので注意しましょう。
ハーブ
実はナメクジは、ラベンダーの香りが苦手です。2004年に静岡県に住む小学生が研究を続け、ナメクジには高度な嗅覚学習能力があると発表しました。
研究の中で、ラベンダーオイルをナメクジの進行方向に数滴落としたところ、何匹ものナメクジの動きが瞬時に止まり、一斉に向きを変えて退散したということが分かりました。
作物を育てる際には、ラベンダーも一緒に植えておくと良いですね。
コーヒーの殻
ナメクジはカフェインを嫌う性質です。コーヒーではナメクジを駆除できませんが、ドリップ後のコーヒーの殻を菜園やプランターの土にまいておくと、予防として、被害を防ぐことができます。
木酢液
木酢液(もくさくえき)とは、炭を焼く際に発生した煙を冷やし、液体にしたものです。燻臭がする茶色い液体で、ドラッグストアでも販売されています。
こちらもコーヒーの場合と同じで、被害を予防することができます。木酢液をかけると、土の中の微生物の働きが盛んになるため、作物の育成が良好になりますよ。
農薬を使った駆除・予防方法
頻繁かつ大量にナメクジが発生した場合は、農薬を使ってみるのも良いでしょう。ナメクジが食害する花や野菜など、全ての植物に使用できる薬剤もあります。
直接吹きかける薬剤や、土に混ぜて浸透させる薬剤、置き型の薬剤もあります。中には、犬や猫など、ペットのいるご家庭で使用できるものもありますので、用途に合わせてお好みの物を選びましょう。
薬剤をまく場合はペットの犬や猫に注意!
ナメクジ駆除薬剤にはメタアルデヒドやリン酸鉄など、毒性の強い成分が含まれているものもあります。
ペットを飼っているご家庭では、誤って口にしてしまわないかも注意して散布しなくてはなりません。中毒症状を起こすほか、最悪の場合は死にいたるケースもあります。
駆除剤を使用する際はしっかりと薬剤の説明書に目を通し、最愛の家族に害が及ばないよう使用しましょう。
素朴な疑問Q&A
ナメクジが屋内で発生しました
ナメクジは排水溝や窓の隙間から侵入し、発生する場合もあります。購入した野菜に付いていることもあれば、台所の生ごみやビールの臭いに誘引されて侵入してくることも。
発見したら割りばしなどを使ってつまみ、熱湯をかけて駆除しましょう。ナメクジが這った部分には塩水を使って洗い流したり、キッチン用漂白剤を薄めた水を使用して拭き取ると良いでしょう。
ナメクジの駆除や対策方法のまとめ
ナメクジには寄生虫がいるため、素手でつかむことは避けましょう。ナメクジは湿気を好み、嗅覚が非常に優れている生物だということも分かりましたね。
この特性を生かし、米ぬか水やビールなど、できるだけ無農薬のものを使ってナメクジを退治していきましょう。
もしも大量発生した場合は、愛するペットのことを考えながら、容量用法をきちんと守り、使用してくださいね。