病気

軟腐病(なんぷびょう)ってどんな病気?症状や対策について

養分の通り道を塞ぎ植物を枯らしてしまう軟腐病。ほとんど全ての植物がかかる可能性のある病気で、発症するとドロドロに溶けて腐ってしまいます。

また、症状が進行すると独特の悪臭を放つこともあり、あまりかかって欲しくない病気のひとつに挙げられます。

この記事では、そんな軟腐病についてご紹介していきます。基本的な情報や、かかりやすい植物、予防策について詳しく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

軟腐病の基本情報

まずは、軟腐の基本情報についてご紹介します。何が原因で、どんな環境下だと発生しやすいか把握することで予防や対策が立てやすくなります。

軟腐病の読み方は?何と読む?

軟腐病は「なんぷびょう」と読みます。軟腐病にかかった植物は「軟らかく」なり、次第に「腐ってしまう」ことから「軟腐病」と名付けられています。

軟腐病は細菌によって感染する

軟腐病は、『Pectobacterium carotovorum(ペクトバクテリウム カロトボラム)』という細菌が原因で発生する病気です。生命力が高く、雑草すら生えていない土壌から見つかることもあります。

この細菌は薬剤が効きにくいため、あらかじめ感染しないように予防することが何よりも大切です。また、見つけ次第すぐに取り除いて処分する必要があります。

軟腐病にかかってしまう原因について

バクテリアは植物の傷口から侵入し、軟腐病を発症させます。そのため、植物を傷つけるようなことは何としても避けたいところです。

具体的には、葉をかじるような虫を防除する、芽かきや切り花を行うときは乾燥した天気の良い日にして傷口が乾きやすいようにするなどが挙げられます。

また、植えるときも傷がつかないよう、慎重に行う必要があります。

軟腐病にかかりやすい植物について

軟腐病はレタスやハクサイ、キャベツといった、葉が重なって玉状になる、いわゆる結球する植物が感染しやすい病気です。

また、ネギやトマト、ジャガイモなど、家庭栽培で人気の作物でも発症します。基本的にどの植物でも発生するので、家庭菜園をする際は何を育てるにしても注意が必要です。

軟腐病が発生しやすい時期について

軟腐病の発育温度は2~40℃、最適温度は30~35℃です。病原菌は気温が高く、湿度の高いところを好みます。

そのため、梅雨~夏にかけては特に注意が必要です。また、台風や大雨では病原菌の分散が激しくなり、被害が急激に拡大する可能性があります。

軟腐病の対策方法

この項目では、とくに家庭で栽培する機会が多い植物の軟腐病の特徴や、その予防策、対策方法についてご紹介します。

白菜における軟腐病

地面に近いところにある葉ほど発症しやすく、発症すると水浸状の斑点ができ、淡い褐色から灰色に近い褐色に変化していきます。

症状が進行すると軟らかくなり、独特の悪臭を放ちながら腐ってしまいます。白菜における軟腐病は進行が早く、短期間のうちに株全体に広がります。

結球前に発病してしまったものは、株自体を処分するしかありません。結球してから発症すると、外側の葉が褐色化していくので、見つけ次第取り除く必要があります。

対策としては連作を避けること、排水を良くして水溜りができないようにすること、根を傷つけないようにすること、発病したものはすぐに取り除いて処分することなどが挙げられます。

キャベツにおける軟腐病

キャベツでは、主に葉に発生します。発症すると、まず水浸状の斑点ができ、急速に病状が進行した後に灰色に近い褐色へと変化します。

さらに症状が進行すると悪臭を放つようになり、次第に株全体が腐ってしまいます。湿度が高い時に収穫する作型だと被害が大きくなりやすい傾向にあります。

また、白菜と違い外葉から症状が見られ始めるということがありません。そのため、見た目は健全でも、中を調べてみると腐っていたというケースも考えられるので、非常に厄介です。

連作を避ける、排水を良くして水溜りができないようにする、害虫防除を徹底するなどの対策法があります。

また、窒素質肥料を使いすぎないようにすることも防除のひとつとして有効です。農林水産省が都道府県別の施肥基準を公開していますので、ぜひ参考にしてみてください。

都道府県施肥基準等 – 農林水産省

ネギにおける軟腐病

育苗中のネギに発病することはほとんどなく、5月~10月ごろの、主に収穫が近い成株に発生します。地面に近い箇所に発生した後、葉に水浸状の斑点ができます。

病状が進行すると内部から徐々に腐っていき、次第に葉が柔らかくなり、最終的には腐って枯死してしまいます。

ネギにおける軟腐病は、感染してしまうと防除できなくなってしまうので、何よりも予防することが大切です。

土壌を消毒する、排水を良くして水溜りができないようにする、発病したものはすぐに取り除いて処分する、窒素肥料の量を適切に守るなどの対策法があります。

じゃがいもにおける軟腐病

じゃがいもが軟腐病にかかると、まず下葉に症状が現れます。軟化・腐敗すると葉から茎に広がり、茎が黒く変色します。

症状が進行すると、内部組織が柔らかくなった後に空洞化し、最後は全体が枯死します。なお、茎が発病するのは7月下旬~8月上旬です。

ネギ同様、じゃがいもも軟腐病になってしまうと防除できなくなってしまうので、何よりも予防することが大切です。

対策法としては、株に傷をつけないように芽かきの時は付け根から芽を抜きとること、排水を良くして水溜りができないようにすること、窒素質肥料を使いすぎないようにすることなどが挙げられます。

トマトにおける軟腐病

茎に症状が出やすく、発症すると黒に近い褐色をした斑点が現れ、茎を一周するように病斑が広がります。

症状が進行すると、内部が腐りながら空洞化し、指で潰せるようになるほど軟らかくなります。指で潰したとき、白濁した液が出るのも特徴です。

また、実が感染することもあり、実全体が黒く腐敗するので、茎が感染した時と比較して、はっきりと感染したことが分かります。

トマトにおける軟腐病は、跳ね上げられた泥が付着して感染するケースが多いので、藁を敷くなどして泥が跳ねないようにすると防除できます。

また、乾燥に弱いので、芽かきや収穫は乾燥した晴れの日におこない、傷口がすぐに乾くようにすることでも防ぐことが可能です。

大根における軟腐病

大根では、育苗期や収穫期などの時期に関わらず、すべての生育期で発症する可能性があるので注意が必要です。

育苗期に感染すると、地面に近い箇所が水浸状になり、葉が黄色くなって枯死してしまいます。生育があると程度進んだものでは根に症状が多く見られ、感染すると葉が垂れ下がり、中心部が空洞化して枯死します。

大根における軟腐病はとくに腐敗が激しく、悪臭もひどいのが特徴です。

対策としては、連作を避けること、抵抗性の強い品種を選んで栽培することなどが挙げられます。また、発病した株は見つけ次第抜き取り、深くに埋めるか燃やすなど、すぐに処分することを心掛けましょう。

土壌消毒で軟腐病を防除する

ここまで、植物ごとの軟腐病の特徴や対策方法についてご紹介しましたが、土壌消毒はすべての植物において、軟腐病の防除に効果を発揮します。

土壌消毒とは、植物に病害を起こす微生物を死滅させる目的で行われる、物理的もしくは化学的な消毒のことを指します。

薬剤による消毒が一般的で、軟腐病ではクロルピクリンまたはディ・トラペックス油剤による土壌消毒が有効です。

また、病原菌は60℃以上になると死滅するため、地面に黒ビニールシートを被せて太陽光を当てる、土壌に蒸気や熱水を注入して死滅させるという方法もあります。これらの方法を取る時には、いかに温度を高くできるかがカギとなります。

軟腐病のまとめ

いかがでしょうか。

軟腐病はほぼ全ての植物に感染する病気で、発症してしまうと完治させることが難しく、独特の悪臭を放つので、非常に厄介な病害です。

しかし、軟腐病の病原菌は熱や乾燥に弱く、発症してしまうまえに予防策を講じておけば、そこまで怖い病気ではありません。

この記事を参考に、軟腐病の予防や対策をおこないましょう。

この記事のおさらいポイント
  • 軟腐病にかかると軟化して腐り、独特の悪臭を放つ
  • 軟腐病は細菌によって感染する
  • 軟腐病は傷口から感染するので、傷がつくような行為は避ける
  • 土壌消毒することで軟腐病を防除できる
  • 軟腐病の原因となる菌は60℃で死滅する
  • 軟腐病は予防すれば怖い病気ではない