植物が感染する病気のなかには、残念ながら発症すると治療できないものがあります。灰色かび病もそのひとつです。
灰色かび病は、ほぼ全ての植物がかかってしまう可能性がある病気のひとつで、空気感染をする病害です。進行すると褐色に変色して腐り、やがて灰色のカビに覆われます。
厄介な病気ではありますが、しっかり予防をすれば怖くありません。そこで、この記事では、灰色かび病の特徴や対策、予防方法などについて、詳しくご紹介していきます。
灰色かび病の基本情報について
灰色かび病は、「ボトリチス・シネレア」という菌が原因である病気で、「ボトリチス病」と呼ばれることもあります。
家庭で栽培できるものに関わらず、ほぼすべての植物に感染する可能性のある病気です。感染すると茎や葉、花が褐色になり、進行すると腐りながら枯れ、全体が灰色のカビに覆われます。
灰色かび病は胞子によって感染する
灰色かび病は、その名の通りカビの一種なので、胞子を形成します。胞子は風や雨によって飛散し、植物の傷口から侵入して感染します。
灰色かび病に感染した他の植物から感染することもあり、すでに枯れたり落ちたりした植物も感染源になることがあるので、そのままにしておかないようにしましょう。
灰色かび病の原因や発症時期について
病原菌であるボトリチス・シネレアは気温が20~25℃前後で、湿度の高いところで活動が活発になります。
そのため、3~7月と9~12月に感染が多くなります。弱った植物が感染しやすく、また、風通しが悪いと発生しやすい病気です。
ほぼ1年中感染が見られるので、常に注意が必要です。
灰色かび病が発生しやすい植物について
灰色かび病は、ほぼすべての植物が感染する病気ですが、特に注意が必要な植物があります。灰色かび病に感染しやすい植物は下記のとおりです。
草花
- シクラメン
- キンセンカ
- スミレ
- ゼラニウム
- チューリップ
- フリージア
- ベゴニア
- ペチュニア
- ガーベラ
- サクラソウ
- プリムラ
- ダリア
- マリーゴールド
野菜
- イチゴ
- レタス
- たまねぎ
- トマト
- ナス
果物
- ブドウ
- 柑橘類
庭木
- ツツジ
- サツキ
- アジサイ
- ボタン
- シャクヤク
- バラ
灰色かび病の対策方法
この項目では、とくに家庭で栽培する機会が多い植物の灰色かび病の特徴や、その予防策、対策方法についてご紹介します。
トマトにおける灰色かび病
果実や花弁、葉に発生しやすく、症状が激しいと、株そのものが枯れてしまうことがあります。また、病斑が茎を一周すると、その箇所から上は成長が止まってしまいます。
果実では、地面に近いものが発症しやすく、感染すると水浸状に変化します。
予防策としては、風通しを良くして湿度が高くならないようにすることや、受精を終わった花の花弁を摘み取ること、アミスター20フロアブルなどの薬剤を7日に1度散布することなどが挙げられます。
バラにおける灰色かび病
バラが灰色かび病に感染すると、花弁に赤みがかった斑点が現れます。花が開かなくなり、蕾も腐って落ちてしまいます。
バラの3大病と言われる黒点、うどんこ病、根頭がん腫と比べて発生頻度は低いものの、それでも注意は必要です。
梅雨入り前にダイセンやベンレートなどの薬剤を週に2~3回散布すること、風通しを良くして湿度を高くしないこと、水やりの際に花弁に水をかけないようにすることなどで、感染を防ぐことができます。
いちごにおける灰色かび病
果実やがく、葉など、地面の上に出ているところすべてに感染の可能性があり、なかでも果実が一番感染しやすい箇所です。
幼果が感染してしまうと、急速に果実全体に広がって黒く変色し、湿度が低いと硬く、多湿だと軟らかくなり腐敗します。
対策方法としては換気を十分におこなって湿度を上げないようにすること、薬剤を7日に1回の割合で散布し、同じ薬剤を使い回さずローテーションすることなどが挙げられます。
ナスにおける灰色かび病
咲き終わってしぼんだ花から感染することが多く、症状が進行すると、がくや果実まで侵されることがあり、茶色くへこんだ病斑ができます。
胞子は形成されるものの晴れの日には飛散が少なく、曇りや雨のなど湿度が高いときに飛散しやすくなります。
対策方法としては風通しを良くして湿度を上げないようにすること、薬剤を7日に1回の割合で散布し、同じ薬剤を使い回さないことなどが挙げられます。
ぶどうにおける灰色かび病
花穂や葉、熟した果実が主な感染箇所であり、特に開花する前や後の花穂が感染しやすいので、注意が必要です。
多湿だと発症しやすく、特にハウス栽培の場合は湿度が高くなりやすいので、湿度低下に努める必要があります。
風通しを良くして、特に開花前後に湿度を上げないようにする、同じもの使い回さずローテーションしながら薬剤を散布するなどの対策方法があります。
薬剤はどこで手に入れる?
ここまで、各植物の灰色かび病の特徴や予防策についてご紹介しましたが、予防のための薬剤はどこで手に入るのでしょうか。
薬剤はホームセンターで手に入れられるほか、近年では薬剤を専門に扱う通販サイトも増えてきいます。
灰色かび病予防のためにも、ぜひ購入しておきましょう。
同じ薬剤は使い回さない
灰色かび病は同じ薬剤を何度も使用すると、その薬剤に対して耐性を持つ性質があります。耐性を持ってしまうと菌自体が強くなり、予防しにくくなってしまいます。
そのため、同じ薬剤を使いまわすことは避け、複数の薬剤をローテーションさせながら散布するようにしましょう。
灰色かび病に特効薬はある?
残念ながら2019年現在、灰色かび病の特効薬は開発されておりません。それどころか、一度発症してしまうと治すことができません。
そのため、複数の薬剤をローテーションしながら散布する、状態を細かくチェックし、発生個所は速やかに取り除いて処分するなど、予防することが何より大事です。
灰色かび病は重曹でも予防できる
重曹には、病原菌の胞子形成や発芽を抑える働きがあることが確認されているので、水で薄めた重曹を吹きかけることで灰色かび病を防ぐことができます。
作り方は1gの重曹を500~1,000mlの水で薄めるだけです。重曹はスーパーなどで簡単に手に入りますので、薬剤に抵抗がある方は自作してみましょう。
また、食酢にも殺菌力があることが認められています。浸透力が強く、植物の細胞内に入り込んで予防してくれるので、食酢もおすすめです。
ただし、重曹も食酢も効果があるのはあくまで予防までです。繰り返しになりますが、予防が何よりも大事ということだけは念頭に置いておきましょう。
灰色かび病のまとめ
いかがでしょうか。
灰色かび病は名前の通りカビ病の一種で、胞子を形成し、風や雨などで飛散して空気感染する病害です。感染すると治すことができないので、非常に厄介です。
しかし、しっかり予防すれば怖い病気ではありません。そして、そのためには同じ薬剤を使い回さないなどのポイントをしっかり押さえておけば大丈夫です。
この記事を参考に、灰色かび病を予防しましょう。
- 灰色かび病は胞子を形成し、空気感染する病害のひとつ
- 灰色かび病は「ボトリチス・シネレア」という菌が原因である
- 湿度が高く、20~25℃前後の気温を好み、3~7月と9~12月は特に注意が必要
- 灰色かび病は感染すると治すことが困難である
- 風通しを良くするなどの方法で予防できる
- 薬剤は使い回さず、複数をローテーションさせることが大事
- 灰色かび病は、ポイントを押さえて予防すれば怖くない