夏野菜の代表とも呼べるピーマンは栄養価が高く、誰もが知る緑黄色野菜として有名です。
栄養価の豊富なピーマンですが、実は家庭菜園で育てるにはうってつけな夏野菜であることをご存知でしょうか?
病気や害虫にかかることが少なく、夏の暑さにも強いピーマンは家庭農園初心者にとっておすすめな野菜になります。
今回は、そんなピーマンの育て方をじっくり解説していきましょう。
ピーマンの特徴
ピーマンはナス科の一種であり、原産地は南アフリカになります。夏の暑さに強く、病気や害虫の被害も少ないため、初心者にとって育てやすい野菜です。
ピーマンの中でも大型・中型・長型と数種類の形があります。未熟果時は緑ですが、完熟果時になると赤や黄色といったようにカラフルな彩りになります。
ビタミンCやカロテン(ビタミンA)を豊富に含んでおり、栄養価が高いです。和食、洋食、中華と幅広く料理に使用することができるため、家庭菜園にはぴったりの野菜になります。
初心者におすすめ!育ちやすく、おいしい品種
ピーマンはどの品種も比較的簡単に育てられますが、中でもおすすめな品種が「京鈴」と「みおぎ」になります。
「京鈴」はウィルス病抵抗性を持ち、収穫後は日持ち性に優れています。また、苦味と臭みが少ないのが特徴です。
「みおぎ」は他の品種と比べて実をつけやすい特徴があります。果皮が柔らかく、ツヤと香りがよいため収穫後はサラダにするのがおすすめです。
カラーピーマンの育て方は?
赤や黄色の色彩が特徴的な「カラーピーマン」は、固有の品種ではなく緑色のピーマンが完熟したものです。
どのピーマンも収穫時期を過ぎれば、緑から赤や黄色に変化し、より栄養価の高い野菜になります。
カラーピーマンを育てたい場合は、通常のピーマンを栽培した後、収穫時期をずらすことで収穫することができます。
ピーマンの栽培方法
ピーマンは夏が旬の野菜であり、5月上旬に苗の植え付けを行えば、6月下旬から11月上旬までの間収穫できる作物です。
収穫までの間に様々な作業を必要としますが、ピーマンの栽培には大きく分けて5つの段取りに分けられます。
- 種&苗の栽培
- 土作り
- 植え付け
- 作物管理
- 収穫
どれも重要な工程なので順を追って説明していきましょう。
ピーマンの栽培①種&苗からの育て方
種から育てる
ピーマンを種から育てる場合、2月下旬頃に種を蒔いてから苗の大きさに育つまでに70日以上かかります。
種からの育苗は上級者でも扱いが難しいとされ、土の温度を18℃以上に保たなければいけません。そのため、初心者は市販で購入できる苗から育てることがおすすめになります。
苗から育てる
苗はホームセンターや園芸店などで購入できます。茎が太くしっかりしていて、葉が10~15枚程度の株を選ぶとよいでしょう。
一番花が咲いているものか、または開花寸前の苗が成長が期待できる元気な苗になります。
早い時期に店舗に売り出されている苗は、まだ成長しきっていないことが多く、栽培時期よりも早い購入はおすすめではありません。
成長が乏しい小さい苗はすぐには植え付けずに、一回り大きいポットに移して一番花が咲くまで育ててから植え付けるようにしてください。
ピーマンの栽培②栽培に適した土の作り方
肥料を加える
肥料を撒き、土に栄養が馴染むまでは時間がかかるため、土作りは最低でも植え付けの2週間前に行ってください。肥料は臭いが少ない化成肥料を使用するとよいでしょう。
本格的な土作りを望む方は、石灰や堆肥を混ぜてpHが6.0~6.5になるように土作りを行ってください。
pH(ペーパー)とは?
0~14段階ある土壌の酸性度のこと。7pHを基準として値が小さくなると酸性の性質が強くなり、大きいなるとアルカリ性の性質が強くなります。適切なpH以外で野菜を育てると育ちが悪くなったり、根腐れを起こす原因にもなります。
ピーマンの栽培③植え付けの方法
植え付けは晩霜の危険が去ってから行い、株間を50㎝程あけて風通しを良くしてことが重要です。通気性をよくすることで病気や害虫の対策に繋がります。
また、苗と苗の間隔が狭すぎると葉が重なり合い、日光を遮って成長を妨げてしまいます。成長不足の原因にもなりますので、しっかりと苗間を取るように心がけましょう。
苗は浅めに植え付け、根が根付くまでの間はたっぷりと水分を与えてください。
他にも、株の根本に藁やピートモスを敷き詰める「マルチング」をしておくことで乾燥、雑草対策にもなります。
ピーマンの栽培④管理の仕方
支柱立て
植え付けが完了したら1m程の支柱を垂直に立て、麻ひもで茎の部分を軽く結び、株が倒れないように固定します。
支柱が動かないよう地中深くまでしっかりと差し込むことがポイントです。
夏場は台風が接近しやすいため、両隣の支柱と紐で連結させ、強風にも耐えられるようにしましょう。
わき芽取り(摘芯)
一番花のすぐ下に生えているわき芽を残し、それ以外のわき芽は全て摘み取ります。こうすることで余分な葉に栄養がいきわたらずにすみ、株が大きく成長していきます。
わき芽取りを行わずに栽培すると葉が生い茂り、害虫発生や成長不足の原因にもなりますので必ず摘み取るようにしてください。
剪定&整枝は必要?更新剪定はやるべき?
ピーマンは基本的に剪定する必要はありません。成長が活発で葉が生い茂っている場合のみ枝を間引いて整枝してください。
また、実つきが悪くなる「なり疲れ」を防ぐために、ナスのように更新剪定をする必要もありません。なり疲れは追肥、水やりで自然と回復していきます。
更新剪定とは?
更新剪定とは、実つきが悪くなった枝や成長が衰えた部位を切ることで枝葉を回復させる方法。
更新剪定を行うことで切り口から新しい枝葉が伸び、作物の長期収穫が可能になります。
プランター栽培の場合
庭に畑がなくとも、市販で売られているプランターを活用すれば家庭のベランダやデッキで手軽に栽培することもできます。
プランターは通常よりも底が深いもの(60㎝以上)を用意して、植え付けは最低でも20㎝程の苗間で植えてください。マルチングは新聞紙でも代用可能です。
支柱立ては植え付けから2週間程たった頃に行います。一番花上部で枝分かれした2本の枝を支柱に結び付けてください。
剪定の必要はありませんが、株間の間が狭く、葉が重なり合っている状態であれば、一番果の上部についている枝4~5本を残して育てるとよいでしょう。
水やりと追肥の頻度
水やり
ピーマンは乾燥に弱いため、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水を与えてください。夏場は特に乾きやすいので朝と夕方の2回行うとよいでしょう。
水やりのポイントは、土全体を湿らせて根まで水分が十分いきわたるようにしてあげることです。
水の与え過ぎは根腐れの原因にもなりますので、適度な水やりを心がけてください。
追肥
ピーマンは6月~10月までと収穫期間が長いため、肥料切れを防ぐためにも適度に追肥を行う必要があります。
植え付けを行ってから約2週間、実が付き始めた頃を合図に1回目の追肥を行ってください。その後の追肥は作物の状態を見て判断していきます。
落花が目立つ、実が付きにくい、雌しべの長さが雄しべよりも短い場合は肥料切れのサインになりますので、こまめに花の状態を確認して追肥してください。
追肥には、窒素分の少ない「ぼかし肥料」がおすすめ!
ピーマンの栽培⑤収穫のタイミング
ピーマンは開花から15~20日前後が収穫時です。
実が6~7㎝程の大きさになれば食べごろなので、ハサミで根元から切り取り収穫していきましょう。
きちんと管理をしていけば秋まで収穫することが可能です。株を疲れさせないためにも早めの収穫を心がけてください。
カラーピーマンの収穫時期は?
カラーピーマンの収穫時期は開花から50~60日前後になります。熟すことで色がつきだし、実全体が黄色や赤に変色した時が食べごろです。
放置し続けるとしわが寄り、ツヤがなくなってしまうため色味がつき次第収穫していきましょう。
ピーマンを育てる際に気を付けるポイント!
害虫
- アブラムシ
- ハスモンヨトウムシ
- タバコガ
- ハダニ など
特にアブラムシはモザイク病の原因になる害虫ですので、見つけ次第早急に駆除してください。
対策として発生源となる雑草の除草やスプレー状の園芸殺虫剤で害虫を駆除していきましょう。
株間にインゲンを植えるとお互いの害虫を寄せ付けない効果あり!
病気
【尻腐れ病】
ピーマンのお尻が黒くなり腐る病気。
土のカルシウム不足、乾燥が主な原因なため、植え付け前、追肥時の窒素肥料の過剰施肥は控えましょう。
【モザイク病】
ウィルス性の病で葉にモザイク状の斑点が現れる病気。
モザイク病は一度かかったら治すことはできません。病変した枝葉は病気が移る前に切り取るようにしてください。
アブラムシが伝染の原因!
【黄化エソ病】
葉が黄色に変色しエソ斑点が生じる病気。
モザイク病と同様一度感染すると治すことはできません。他の株に移る可能性があるため、症状が進行している株はまるごと処分してください。
連作障害
ピーマンはナス科・ウリ科に連作障害を持つため、別の畑またはプランターで栽培するようにしてください。
同じ場所で栽培する場合は、最低でも4~5年の間をあけるようにしましょう。
ピーマンの栽培方法まとめ
ピーマンを家庭で栽培する際のまとめになります。
- 初心者は苗からの栽培がおすすめ
- 水やり時は乾燥、やり過ぎに注意
- 必ずわき芽を摘み取る
- 花弁や実の状態を見て適度に追肥を行う
- ナス科・ウリ科との連作障害に気を付ける
ピーマンは栄養価が高く、幅広い料理にも使えるため家庭菜園に最適の野菜です。
いくつかの注意点に気を配れば、家庭でピーマンを栽培することはそう難しいことではありません。
誰でも手軽に栽培できる野菜ですので、自分の手で育ててみてはいかがでしょうか。