こちらは葉ネギの記事です。長ネギについては下記を御覧ください。
長ネギ(下仁田ネギ) 栽培・育て方のコツ(土寄せ・育苗・病害虫など)
葉ネギは青い葉の部分が多く根元まで食べられることから青ネギとも呼ばれ、古くから薬味として利用されてきました。
代表的なものに、京都の伝統野菜である「九条ネギ」や福岡で栽培されている「万能ねぎ」などがあります。
葉ネギは畑が無くてもプランターで簡単に育てられるので、栽培初心者の方にもおすすめですよ。ご自宅で育てれば、新鮮な葉ネギをいつでも使いたい分だけ収穫できますね。
今回は葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)の栽培方法や育て方のコツを詳しくご紹介します。干しネギ栽培や気になる病害虫についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)栽培の基本情報
栽培環境:日当たり・風通しの良い場所を好む
種まき:3月~4月(春まき)/7月~9月(夏まき)
収穫期:6月~7月/9月~2月
種まき時期は春と夏の2回ありますが、寒冷地では気温が高くなる6月~7月頃にまくと良いでしょう。
種蒔きから約2ヵ月半ほどで収穫できるので、時期に合わせて品種を選べば1年を通して栽培可能です。
葉ネギの品種
葉ネギは産地や栽培方法によって多くの種類があります。風味や太さなど好みに合わせて品種を選ぶと良いでしょう。
小春(小ネギ~中ネギに最適)
葉伸びが旺盛で病気に強いことから、初めての方にも育てやすい品種です。細い葉はやわらかく香りに優れており、小~中ネギとして最適です。冬の寒さに強く周年栽培が可能です。
九条ネギ
葉は肉厚でぬめりが多く、香りと甘さが強い品種です。太く濃い緑色で寒さにも強い「九条太」や、細身で淡い緑色の早生種である「浅黄系九条」があり、どちらも育てやすさが特徴です。
岩槻ねぎ
江戸時代から旧岩槻市で栽培されてきた葉ネギで、青い葉の部分が短く1株から10本以上になる分けつ性が特徴です。白身の部分も食べることができ、葉質は柔らかく甘みがあります。
万能ねぎ
万能ねぎは品種名ではなく商標登録名で、福岡県で栽培されたブランドネギです。葉は細く長さ40cmほどで、特有の風味と日持ちの長さが特徴です。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)の栽培方法
露地栽培
畑や庭で栽培する場合は、土づくりをしっかりと行うことが大切です。葉ネギは酸性土壌を嫌うため、種まきや植え付けの2週間前に苦土石灰を混ぜこみ土を中和させます。
1週間後に元肥として野菜用の緩効性化成肥料を施し、十分に耕しておきましょう。土壌の水はけが悪いようであれば、畝を立てると安心です。
プランター栽培
葉ネギは生育旺盛で、土の深さを必要としないのでプランターでも育てられます。大きさは深さ10cm以上あればプランターでも植木鉢でも栽培できます。
栽培に使用する容器は底に排水機能があるものを選びましょう。葉ネギは多湿に弱い性質のため、土壌の水はけを良くすることが上手に育てるコツです。
また用土は市販されている野菜栽培用の培養土がおすすめです。排水性を高めるため、プランターの底に敷き詰める鉢底石も用意してください。
水耕栽培
気軽に葉ネギ栽培をはじめたい方は、キッチンでも育てられる水耕栽培がおすすめです。土やプランターなど道具を買い揃える必要もなく、室内で栽培するので害虫の心配もありません。
栽培方法も簡単で、葉ネギの根元5cmほどを残し水につけておくだけです。切り口からどんどんと新しい葉が伸びてきますよ。
容器に入れる水の量は葉ネギの根が浸かるくらいを目安とし、毎日新鮮な水に入れ替えることが重要です。
初心者でも簡単!葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)の育て方
種まき
条間(列と列の間)を10~15cmほど空け、深さ1cm程度の種まき用の溝を作ります。1cm間隔で種をまき、うすく土をかけて種が流れ出ないよう優しく水を与えてください。
土を乾燥させないように注意し、発芽するまでは濡れた新聞紙などを被せておきましょう。草丈が3~5cmほどに生長したら、株間3cmを目安に生育の悪い苗を間引きます。
定植(苗から育てる)
少数育てる時や栽培初心者の方は、園芸店などでポット苗を購入して育てると良いでしょう。草丈20~30cmまで育っていると植え付けに適しています。
まず苗をポットから取り出し、3~4本ずつ束に分けておきます。この時大きさや太さを揃えて束ねるとその後の生育が揃いますよ。
深さ5ほどの植え穴を掘り、株同士の間は10cmほど間隔を空け、ネギ苗を差し込むように植えつけていきます。
葉ネギは浅く根を張り酸素を多く必要とするため、深く植えすぎると根腐れを起こしやすくあります。浅植えを心がけ3cmほど用土を被せたら、手のひらで軽く表面を押さえ根と土を密着させましょう。
水やり
種まきから発芽するまでの間や、苗の植え付けから根付くまでの間はたっぷりと水を与えましょう。
その一方、根付いた後は苗を腐らせないよう乾燥気味に育てます。地植えであれば水やりは不要ですが、鉢植えやプランターは乾燥しやすいので土の表面が乾いたら水を与えてください。
風通しや気温など環境によって土が乾くタイミングは変わるので、定期的に水やりをするのではなく必ず土の状態を観察してから行いましょう。
追肥
生長してから肥料過多になると病気にかかりやすくなるため、基本は元肥のみで育てます。
生育不良の時や必要な分だけ収穫した時には2週間に1回化成肥料を施しましょう。またプランターや鉢植え栽培では水やり時に養分が流れ出てしまうため、薄めた液体肥料を1週間に1回与えても良いでしょう。
追肥したあと倒れそうになっている株があれば、株元に軽く土を寄せておきます。
収穫
葉ネギは植え付けから60日~70日ほどで収穫時期を迎えます。草丈60~70cmほどになったら、土を崩して丁寧に株を抜き取りましょう。
または地際部5cmほど残して収穫すると、切り取った後から新しい芽が伸びて継続的に収穫を楽しめます。何度か収穫するためには、刈り取った後の追肥を忘れずに行いましょう。
収穫時期を逃すとトウ立ちして、ネギ坊主と呼ばれる花芽がつきます。ネギ坊主がつくと生長が止まり、一気に品質が落ちてしまうのですぐに摘み取りましょう。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)の増やし方(株分け)
葉ネギを増やしたい場合、ネギ坊主から種を採って育てても良いのですが、家庭菜園ではより手軽にできる株分けがおすすめです。
株分けのタイミングはネギ坊主ができ始めた頃で、株ごと土から抜き取り分けつした部分で株を分けます。根がしっかりとしているものを選び、ネギ坊主を摘み取ってから再度植えつけましょう。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)栽培で気をつけたい病害虫
家庭菜園で避けては通れないのが病害虫による被害です。こまめに株の状態を観察し、初期症状のうちに対処できるようにしましょう。
葉ネギ栽培で気をつけたい病気や害虫について、予防と対処方法を紹介します。
病気
病気の原因はカビによるものが多く、土壌環境を整えて栽培することで大きな被害になることはありません。過湿に注意し、発病箇所は見つけ次第摘み取りましょう。
ベト病
平均気温15~20℃前後で雨が続くとかかりやすくなるカビが原因の病気です。葉にぼやけた黄白色の病斑点ができ、被害が進むと薄いカビが生じます。土壌の水はけと風通しを良くし、ネギを連作した土での栽培は避けましょう。
さび病
春と夏に雨が続くと発生する病気です。葉にさびのような橙色の盛り上がった小斑点が多数現われ、病班周辺から枯れはじめます。肥料切れが病気の発生を助長するので、適切な追肥を行いましょう。
害虫
気温が上がり始める春~夏にかけて栽培する場合は、どうしても害虫被害が多くなります。見つけ次第補殺するか、薬剤を散布し防除しましょう。
なるべく無農薬で育てたい方は、虫の活動が活発になる春前に防虫ネットを張っておくと安心です。
ネギアザミウマ
体長約1.5㎜ほどの細長い虫で、葉を吸汁されると白い斑点が現われます。光の乱反射嫌うため、アルミホイルなどキラキラとしたものを株元に置くと忌避効果があります。
ネギハモグリバエ
葉に卵を産みつけ、卵からかえった幼虫は葉の中から食害していきます。葉に蛇行した白い筋や斑点が現われたら、すぐに摘み取り駆除しましょう。
アブラムシ
春と秋によく発生する害虫で、葉や茎から吸汁して株を弱らせてしまいます。繁殖力が非常に強く、あっという間に増えてしまいます。天然素材のハッカスプレーを直接吹きつけると増殖を防げます。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)栽培によくある失敗
葉ネギ苗が枯れる(水やりの方法)
葉ネギは過湿に弱く、排水性や通気性の悪い土壌で育てていると根が傷んでしまい葉が枯れることがあります。根づいた後は水やりを控え乾燥気味に育てましょう。
特に夏場は高温多湿の条件から、生育不良を起こしやすくなります。日中の暑い時間帯に水をやると水蒸気で根が腐る可能性もあるので、朝か夕方の涼しい時間帯に行いましょう。
葉ネギが発芽しない(光の当てすぎ・温度管理)
野菜を栽培する上で太陽の光は重要な要素ですが、葉ネギは嫌光性種子といって太陽光にあたると発芽しにくくなります。発芽までは新聞紙や不織布を被せて暗めに育てましょう。
また発芽には温度管理も大切です。30℃を超える高温になると発芽不良になりやすいので夏場の種まきは避けましょう。
干しネギの栽培方法
大株に育てたい場合は「干しネギ栽培」という独特の栽培方法があります。1ヶ月ほど干して乾燥させることで発根が良くなり、生育旺盛で収穫量も増え大株に育つようになります。
干しネギ用の苗は夏ごろ園芸店などでも出回りますが、栽培している株を使うこともできます。
その場合春に種まきをして中ネギまで育てたものか、前年から栽培している古株を7月ごろに堀り出し1週間ほど地面に並べて乾燥させます。
次に葉を縛って束にし、風通しの良い日陰につるし約1ヶ月ほど干します。干している間はカビや虫が発生しないよう注意しましょう。
8月下旬ごろ枯れた葉を取り除き、長さを揃えて1箇所に3~4本ずつ植え付けます。植え付けてすぐ水を与えると腐りやすいので、根付くまでは乾燥気味に育てます。
約1週間ほど経ち新しい芽が出てきたら水を与えます。追肥をしてうまく管理すれば翌春まで収穫できますよ。
葉ネギ(万能ねぎ・九条ネギ)栽培のまとめ
葉ネギは植えた後の手入れが少ないため、初めての方でも簡単に育てられます。一度植えれば何度も収穫できるのも栽培の魅力ですね。
栽培に適した土壌で育て湿りすぎないよう水やりを管理すれば、ベランダでも立派な葉ネギを収穫できますよ。ぜひみなさんも気軽に栽培してみてくださいね。