鍋物に欠かせない青菜といえばやはり春菊ですね。関西ではキクナとも呼ばれ、特有の香りと歯触りがクセになる冬の代表的な葉野菜です。
鍋物の他にも天ぷら、おひたし、和え物などに活用できるほか、最近では生のままサラダに使える品種も登場しています。
そんな春菊はキク科特有の香りで害虫を寄せつけず、2か月足らずで収穫できるので家庭栽培初心者でも簡単に育てられます。今回は春菊の種類や栽培のポイントをわかりやすくご案内するので、ぜひ参考にしてください!
夏の栽培は避けよう!春菊の特徴
春菊を上手に育てるためには、春菊の特徴を知ることが大切です。
春菊は15~20℃の冷涼な気候で生育する野菜です。高温多湿になると病気になりやすい特性を持つため梅雨から夏の栽培には向いていません。
寒さには比較的強いため、トンネル栽培やハウス栽培などの防寒対策をとれば冬を越すこともできます。
春菊の種は、春まきと秋まきができます。ただし、春まきの場合は気温の上昇などでトウ立ちをしてしまうこともあります。家庭菜園の経験があまりない人は、失敗しにくい秋まきがおすすめです。
トウ立ちとは?
花を咲かすために花茎(かけい)が伸びてしまう状態のことを言います。葉野菜の場合、葉っぱが固くなり味が落ちてしまうため好ましくありません。
独特の香りから害虫を寄せつけず、アブラナ科の白菜やブロッコリーとのコンパニオンプランツとしても有名です。
- 種まきの適した時期:3月下旬~4月下旬 / 9月上旬~10月上旬
- 種まきから収穫までの栽培期間:40~50日
春菊の種類
葉っぱの形や茎の太さが違うさまざまな種類の春菊が、全国各地で栽培されています。日本で主に栽培されているのは下記の2つの品種です。
大葉春菊
葉っぱの切れ込みが浅く、厚みがあってクセのない味わいの大葉種は、中国地方と九州地方で多く栽培されています。柔らかいので生のままサラダに使うことも可能。
中葉春菊
日本で一番多く栽培されているのが中葉種です。香りが強めで、葉っぱにギザギザの切れ込みが深くあるものです。
中葉春菊は、さらに下記の2つのタイプに分かれます。自分で栽培したいタイプの種を購入してください。
- 株立ち型…茎が伸びやすく、わき芽を順次収穫するタイプ
- 株張り型…株もとから側枝がたくさん出て、株ごと抜きとって収穫するタイプ
土作り~畝作り
春菊の種は直まきするのが一般的です。発芽をよくするためにも、種まき前に土の環境を整えてあげましょう。今回は初心者にも栽培しやすい秋まきをメインに紹介していきます。
まず種まきの2週間前に苦土石灰(くどせっかい)を150g/㎥を施して耕します。春菊は多めの肥料を好むため、種まきの1週間前に堆肥(たいひ)3kg/㎥と、化成肥料100g/㎥を土に混ぜ込んでよく耕してください。
最後に水はけをよくするために畝を作ります。幅50~60cm、高さは約10cmに整えます。
種まきと水やり
種まきは9月上旬から10月上旬がベストです。まず、種をまく前に畝に水まきをして湿らせておきましょう。その後に、畝の中央に深さ5mmの溝を割り箸などで作って、1cm間隔で種をまきます。
春菊の発芽率は50%と低めなので、種は多めにまきましょう。
春菊の種は、発芽するのに光が必要な好光性種子です。種を深く埋めると発芽しなくなるので、まいた種が見える程度に土をパラパラかけて軽く押さえます。
被せる土が薄くて乾燥しやすいため、種まき後にもう一度水まきをします。この時に種が水で流されないように、じょうろなどで優しくあげてください。5~7日程度で発芽します。
水やりのタイミングは、表面の土が乾いたらあげるというペースで大丈夫です。朝と晩の2回、または1日1回、天候によって水をあげてください。
間引く間隔は品種により異なる
春菊の芽が発芽して育ってきたら、込み合っている箇所を間引きしてあげます。株と株の間を一定間隔に開けらることで、日当たりと風通しを確保して発育を促します。
間引きをするときは、常に丈夫な株を残すように心がけましょう。
1回目の間引きは、本葉が2枚の時に行います。株間を2~3cmにしてください。
2回目の間引きは、本葉が4~5枚の頃に、株間を6cm位にします。株ごと収穫する(株張り型)タイプの春菊の間引きはここまでです。
わき芽を摘み取る(株立ち型)タイプの春菊は、丈が10cmになったら株間が15cm位あくように3回目の間引きします。
栽培記録とともに追肥をしよう!
追肥を忘れると発育が遅れます。忘れないように、カレンダーにマークをつけたり、栽培記録をつけておきましょう。栽培記録は次の機会の参考になるのでおすすめです。
1回目の追肥は、2回目の間引きの時に行います。30g/㎥程度の化成肥料を軽く土と混ぜて、株元にあげて下さい。そのときに土寄せも一緒に行いましょう。
これ以降は2週間ごとに追肥します。もし生育状態が良くない場合は、水で液体肥料を500倍に薄めて水やりの代わりにあげましょう。
プランター&ポットでの栽培方法
春菊は発芽さえしてくれれば、スクスクを元気に育ってくれるのでプランターやポットでの栽培も簡単です。
株を取ったら収穫が終わってしまうタイプより、常にわき目が出てくる株立ち型の方が楽めます。プランター栽培ならビニールトンネルなどの防寒対策をとりやすく、上手く育ててあげれば翌春まで収穫できる可能性がありますよ!
【用意するもの】
- プランター or ポット:土の深さが15cm以上になるもの
- 春菊の種:わき芽を収穫するタイプ(株立ち型)がおすすめ
- 野菜用の培養土
- 鉢底石
【種まきと栽培方法】
- 水はけをよくするため鉢の底に鉢底石を入れる
- 培養土を鉢の縁から2~3cm下まで入れる
- 種を1cm間隔でまいて、薄く土を被せる
- 水が鉢の下から滴るまで水やりをする
- 間引き、追肥は地植えと同じように行う
春菊の収穫
春菊の収穫は、株立ち型と株張り型で違います。
株立ち型(摘み取りタイプ)の摘心と摘み取り方
株立ち型の場合は、春菊の丈が20cm位になったら下の葉っぱを5枚ほど残して主枝を摘心(てきしん)します。摘心することで、主枝の生長が止まってわき芽へ栄養が行き渡り、側枝が次々と出てきます。
収穫は丈が25cm位になったら、側枝(わき芽)を摘み取ります。目安として側枝の先端から20cm位、葉っぱを1~2枚残してハサミで切り落としましょう。この方法で収穫を繰り返し行えます。
霜が降りる頃になると葉っぱが傷んでくるので、その前に収穫を終わらすか、トンネル栽培にして防寒しましょう。
摘心とは?
生長中の茎や枝を摘み取る作業のことです。こうすることで、縦方向に流れていた栄養を花や実へ促します。春菊の場合は側枝を充実させて収穫量を増やすことができます。
株張り型(株ごと収穫タイプ)の収穫
株ごと収穫するタイプの春菊は、根元から側枝が次々と伸びだします。草丈が20cmほどになったら、根から株ごと抜きとって収穫します。
春菊栽培でよくある疑問&質問
こちらでは、春菊を栽培する際に聞かれる疑問を幾つかご紹介します。
春菊は連作障害があるの?
連作障害はあります。同じ場所での栽培は1~2年間隔を開けるか、連続栽培をする場合は土を入れ替えてください。
春菊の病害虫被害は?
病気や害虫の発生は少ない野菜です。ただし、高温湿度になると「べと病」や「炭そ病」が発生することがあります。梅雨の時期や暑い時期の栽培は避けて、水はけをよくするようにしましょう。
枯れた葉っぱを放置せずにすぐに摘み取り、株を清潔に保ってください。
挿し木で増やせるの?
春菊は生命力が強い植物です。培養土を入れた鉢に、切った春菊の茎を挿せば比較的簡単に根が生えてきます。水を張ったコップに差して、根っこが生えてからポットに植え付けてもいいでしょう。
失敗しない春菊の育て方<まとめ>
β-カロテンやビタミンC、葉酸や鉄が多い春菊は“食べる風邪薬”と呼ばれるほど栄養が豊富です。ちょうど風邪をひきやすい季節に収穫できるのも、春菊栽培の魅力の一つです。
家庭で栽培した新鮮な春菊を料理に使って、さまざまな料理を楽しみましょう!最後に春菊の育て方のポイントをまとめました。
- 春菊の適正な生育温度は15~20℃
- 高温多湿が苦手なので夏の栽培は避けよう
- 種は菜園やプランターへ直まきをしよう
- 適正時期に間引きと追肥をして株を育てよう
- 株張り型と株立ち型では間引きや収穫方法が異なるので注意しよう