家庭菜園・野菜の栽培

【初心者】苔の栽培・育て方のコツ(種類や増やし方など)

日本庭園や寺院などに青々と美しく生えている苔は、観葉植物や盆栽に使用されたり、苔玉としてアレンジされています。

ビンの中で苔を育成する、テラリウムも人気です。今回は苔の栽培方法や初心者にもおすすめの種類、増やし方についてご紹介していきます。

苔について

苔は生命力が非常に強い、タフな植物です。今から約4億8千年ほど前、地球が誕生し陸上での生命活動が始まった際、最初に繁栄した植物が苔だと言われています。

苔はその強い生命力から、約5憶年の間ほぼ姿形を変えることなく繁栄を続けてきました。苔は花も果実も実らないため、胞子(細胞)によって増えていきます。

また苔は根を持たない品種も多く、一体一体が小さいので群がって生えています。多くの苔は年中緑色をしており、ゆっくりと成長します。

永遠に生き続けることができる、1つの不思議な生命体である苔。なんだかとっても神秘的な植物ですね。

庭でも室内でも栽培OK!苔の育て方

苔栽培に必要なポイントは4つあります。これらの条件が揃っていれば、初心者でも簡単に育成が可能です。

  • 適度な排水性と保水性を持ち合わせた土
  • 適度な水分と湿度
  • 日陰~半日陰の環境
  • 高温に注意

苔は陸上・室内で育てることも可能です。ガラス容器の中で苔を育てるテラリウムとして、育成を楽しむこともできます。

初心者におすすめの種類

苔には様々な種類があり、日本には約2500種類もの苔が生息しています。初心者にも扱いやすいおすすめの品種をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ハイゴケ

ハイゴケは、日本ではよく見られる一般的な種類の苔です。明るい緑色の三角形の葉が特徴的で、乾燥に強く石や木に根付かせやすいため、苔玉やテラリウムにぴったりです。

シノブゴケ

苔玉やテラリウムなど、屋内栽培向きの品種です。石や流木に活着しやすい性質を持っています。

スナゴケ

上から見ると、まるで星の砂のように、葉の形が可愛らしい星型をしています。一度乾燥して元気がなくなってしまっても、水分を与えると再び復活する、日照や乾燥に強い品種です。管理もしやすいため、苔庭や苔盆栽、箱庭に適しています。

ヒノキゴケ

マット状の苔と比べてヒノキゴケは高さがあるので、空間美を楽しむテラリウムに人気の品種です。

タチゴケ

木漏れ日がさす場所を好み、もこもことした姿が可愛らしい品種です。葉の大きさが他の苔に比べて比較的大きいため、苔庭でもアクセントとして使いやすいです。

苔栽培の土について

苔栽培には、樹皮培養土を利用するのがおすすめです。ピートモス(苔植物を細かく砕いて乾燥させた土)と小玉の赤玉土を7:3の割合で混ぜたものを用土として使用するのも良いですよ。苔は排水性と保湿性さえ持ち合わせているなら、どんな土でも大丈夫です。

また苔は植える土に加えて、植えた後にも土を被せます。こうすることにより土の乾燥や直射日光を防ぎ、日光の量を調節することができます。

苔の植え方や増やし方

苔の増やし方・植え方は「まき苔法」「はり苔法」「移植法」の3種類あります。植え方は品種によって異なります。

まき苔法

まき苔法とは手でほぐすなどした苔を、種をまくように植えていく方法です。小型~中型の苔や、少ない量の苔を増やすことに適しています

まき苔法は最もよく行われる苔の植え方で、手間と時間はかかるものの、苔の育成が揃うといったメリットがあります。

まき苔方法の手順
  1. 育苗箱(苗を育てるときに使用する浅い箱)に、樹皮培養土などの土を敷き詰めておく
  2. 土の上に、手で揉みほぐして細かく砕いておいた苔を均等にまいていく(★苔が重ならないようにまいていくのがポイント)
  3. 苔をまき終えたら、苔同士の隙間を埋めるように上から土をかける
  4. 苔や砂が流れないように気を付けながら、たっぷりと水を与える
  5. 水やりが済んだらキッチンペーパーを育苗箱に被せておく
  6. 芽が生えそろうまでは、土が乾燥しないように気を付けながら管理する

移植法

移植法は、庭や岩などに苔の小さな塊を植え付けていく方法です。スギゴケやヒノキゴケなど、他の苔に比べて背が高く、大きく立ち上がる品種の植え付けに向いています

この方法を行う際には、移植場所に雑草がないか確認し、残留しない除草剤などをまいて準備をしておきましょう。

移植法の手順
  1. 土に腐葉土(葉が腐敗してできた土)や、ピートモス(苔植物を細かく砕いて乾燥させた土)などの土壌改良剤をまき、スコップなどで混ぜ込んでおく
    (★ここで土の水はけが気になる場合は、市販の軽石を混ぜ込む)
  2. スコップなどで、土の表面を平らにならす
  3. 一握りくらいの大きさの苔を、土に差し込むようなイメージで植え付ける
  4. 同じ要領で、どんどん苔を植え付けていく
  5. 移植した苔の間に土を入れ、隙間を埋める
  6. たっぷりと水を与える

はり苔法

はり苔法は、シート状の苔をそのまま庭や土に貼るように植え付けていく方法です。苔を一度にまとめて植え付けることができるため、短期間で広範囲に苔を植え付ける際には最適です。

はり苔法の手順
  1. 土に腐葉土や、ピートモスをまき、スコップなどで混ぜ込んでおく(★土の水はけが気になる場合は、市販の軽石を混ぜ込む)
  2. スコップなどで、土の表面を平らにならす
  3. 苔シートを土の上に置いていき、スコップやコテなどを利用して地面に密着させる
  4. 移植した苔の間に土を入れ、隙間を埋める
  5. たっぷりと水やりをする

苔栽培の日当たりについて

苔は品種によって日光条件が異なります。例えば、日本では馴染み深い品種であるハイゴケは、1日に数時間しか日が当たらない環境の半日陰を好みます。

一方、日照や乾燥に強いスナゴケは日なたを好み、1日4時間以上日が当たる場所が栽培に適しています。苔を購入する際には店員さんに聞くなどし、栽培場所に適した品種を選んでおきましょう。

苔の湿度や風通しについて

多くの苔は湿度の高い環境の方が育成が良くなるため、湿度を保つ工夫が必要になります。風通しが良い場所は苔が乾燥してしまうため、直接風が当たらない場所を選んであげましょう。エアコンの室外機付近も乾燥がひどいため、苔を植え付けるには向いていません。

空ビンを使ってテラリウムを作ろう

テラリウムは、ビンなどのガラス容器で植物を栽培することです。空き瓶さえあれば、気軽に苔栽培を楽しむことができますよ。

用意するもの
  • ガラス瓶(ジャムの空き瓶や100均のガラス容器など何でもOK)
  • お好みの苔
  • テラリウム用の土(富士砂・炭・赤玉土などをミックス)
  • ミニチュアなどの装飾品
  • スプーン
  • ろうと
    (口の小さい容器にセットし、液体や砂などをこぼさずに投入できるもの)
  • ピンセットor箸
  • ハサミ
  • スポイト(水を吸い取るもの)

テラリウムの作り方

テラリウム栽培の土は、土壌環境を良好に保つ炭を土に混ぜておくと良いですよ。また、容器の3分の1~上部の半分は空間を作るようにしてください。こうしておくことで、空気の循環が良好になります。

テラリウムの作り方
  1. 容器に土を入れる(口の狭いビンに入れる際には、ろうとなどを使用する)
  2. 土がひたひたの状態になるまで、水を注ぎ入れる
  3. 容器を斜めに傾けて、スポイトで余分な水を吸い取る
  4. お好みの苔を準備し、枯れた部分があれば取り除く
  5. 苔を植えたい場所にピンセットで少し穴をあける
  6. 苔を優しく指やピンセットで挟み、穴に植えこむ
    (★ピンセットを引き抜く際に苔まで抜けてしまいそうな場合は、スプーンで軽く苔を押さえながら引き抜くと良い)
  7. お好みのフィギュアなどを置き、デコレーションする
  8. 直射日光が当たらない場所にて育成・管理する

テラリウムの管理方法

テラリウムは密閉した容器の中で育成するため、湿度が保たれやすく管理が簡単です。水やりは苔にみずみずしさがなくなった場合のみ、霧吹きなどで優しく水を吹きかけてあげるだけで構いません。

それ以外は週に1~2回容器のふたを開け、息を吹きかけてあげるだけで大丈夫です。苔が容器の中で生い茂り過ぎていると感じたら、気になる部分をハサミでカットしてあげてください。

素朴な疑問Q&A

苔の土がカビ臭いような気がして苦手です

市販の燻煙(くんえん)を利用してみましょう。燻煙はもみ殻を灰にしたもので、土に少し混ぜると臭いが緩和されます。大人の握りこぶしくらいの土の量に対して、小さじ1ほどの燻煙量が目安です。

栽培キットの販売はありますか

もちろんあります。園芸店やホームセンター、通販でも栽培キットの購入は可能です。手軽に始められますので、ぜひ利用してみましょう。

苔栽培のまとめ

苔の栽培方法や初心者におすすめの種類、増やし方などについてご紹介してきました。

苔栽培は、土・湿度・育成環境が大事です。高温に注意しながら、ぜひお気に入りの苔を栽培してみてくださいね。