山芋は別名“ヤマノイモ”と呼ばれており、独特のねばりとコクのある風味が特徴的な根菜類です。
品種も個性的な形のものが多く、葉の付け根にできる“むかご”も美味しく食べられます。今回は、山芋の品種や栽培方法、育て方のコツやむかごについてご紹介します。
山芋(ヤマノイモ)について
山芋の栽培品種の多くは中国が原産です。ツル性の多年草で、茎の部分が肥大して芋になります。実は、山芋という品種はなく“山芋”はヤマノイモ科に属す芋類の総称のことを言います。
山芋にはディオスコリンというタンパク質や、消化酵素であるアミラーゼなど、各種酵素が豊富に含まれています。
通常の芋は生では食べることはできませんが、山芋は生でも食べることができる、世にも珍しい芋なのです。すりおろしてとろろにしたり、短冊切りにしてサラダにしたり。
加熱すると更に味わいが豊かになるため、天ぷらや山芋ステーキ、ソテーや炒め煮にしても楽しめます。お好み焼きのつなぎとしても使用でき、料理のアレンジが広がる美味しい野菜です。
山芋の種類
山芋は芋の形から「長芋群」「いちょう芋群」「つくね芋群」の3種類に分かれます。個性的な品種は通信販売で入手できますよ。
長芋(ねばり:★☆☆☆☆)
長芋群ヤマノイモ属に属する長芋は、山芋の代表的な栽培品種です。まっすぐに伸びた根の形が特徴的で、全体的にふっくらと育ちます。比較的育てやすい品種で、さっぱりした味わいが楽しめます。
姫神芋(ねばり:★★★★☆)
長芋群に属する姫神芋は、ねばりが強く比較的掘りやすい品種です。長さ約50cmほどと山芋にしては短く、土の質によって形状が変わります。
いちょう芋(ねばり:★★★★☆)
いちょう芋群に属する、関東で人気の品種です。関東ではヤマトイモとも呼ばれています。平べったくイチョウの葉に似た芋ができます。長芋よりも粘りが強いので、すりおろしてとろろにするのが向いています。
つくね芋(ねばり:★★★★☆)
つくね芋群に属するつくね芋は、別名ヤマノイモとも呼ばれています。丸い形状で掘り出しやすく、関西地方を中心に栽培されています。モチモチと粘りが強く、大きなものは800gほどにもなります。
自然薯(ねばり:★★★★★)
日本の野山に自生している自然薯は、細長くクネクネとした形状で、長さが2~3mになるものもあります。家庭菜園でも栽培は可能ですが、根を折らずに彫り上げるのは大変な根気が必要です。
近頃はパイプを利用したパイプ栽培が普及し、形状がまっすぐな自然薯が出てくるようになりました。
台湾山芋(ねばり:★★★★☆)
台湾山芋は、アフリカやアジアなど熱帯~亜熱帯地域で広く栽培されています。長さ約30cmほどの大きさで粘りが強く、白いタイプと紫色のタイプがあります。同じ仲間に属する長芋や自然薯とは違い、むかごはできません。
むかごって何?
山芋はツル性の多年草なので、地上部分には四方八方につるが枝分かれし、たくさんの葉を付けます。
その葉の付け根部分にできる、小さく丸い粒が“むかご”です。例えるなら、山芋の赤ちゃんと言ったところでしょうか。
1枚の葉に1つずつつくため、葉がたくさん茂ると1株に100個ものむかごが収穫ができます。
栄養価は山芋より高く、鉄分やカリウム、マグネシウムなどが豊富に含まれています。むかごをツルに付けたままにしておくと、根に栄養が行きにくくなるため収穫をしてください。
収穫したむかごは素揚げにしたり、茹でたり、お米と一緒に炊いて美味しくいただきましょう。
プランターはNG!山芋の栽培方法
山芋は芋になる部分が長く育ち、土を深く耕して育てます。菜園などでの露地栽培は可能ですが、芋が長く伸びるスペースが少ないプランター栽培には向いていません。
山芋は種からではなく、種芋と呼ばれる市販の無漂白の芋を植えて育成します。植え付け時期の4月上旬~5月中旬くらいになると、園芸店で種芋が出回るので購入しましょう。
収穫は植え付けてから約半年後の、10月中旬~翌年の2月下旬です。連作障害がありますので、3~4年は栽培期間をあけてください。
山芋の菜園準備
種芋植え付けの2週間前に菜園に苦土石灰をまいて、シャベルで約80cm以上深く掘ってかき混ぜます。
植え付けの1週間前には元肥(植え付ける前に施しておく肥料)をまいて、しっかりと混ぜ込んでおきましょう。
種芋の準備
市販の無漂白の芋を種芋にし、カットします。通常は横に切りますが、部位によって大きさを変えます。
根が出やすい付け根の部分は50~60gと小さめにし、太い胴の部分は100gほどの大きめに切り分けてください。
例えば長芋の場合ですと、付け根部分を50~60g、残りの部分は5~7cmほどの80~100gにします。
いちょう芋は平べったいので、1カットが50~70gほどの大きさにしましょう。カットしたら、切り口を乾燥させておきましょう。
山芋の植え付け
菜園に深さ5~6cmの一列の穴を掘り、種イモの切り口を横に向けて植え付けます。全ての種イモの向きを揃えて、間隔は50~60cmあけてください。
種イモを穴に置いたら、土をかぶせて種イモを埋めます。高さ10~15cmほど土を盛り上げて、かまぼこ型の畝(うね)を立てましょう。
支柱を立てよう
ツルが伸び始めてきたら、株ごとに支柱を立てましょう。山芋が成長するとツルや葉が茂り、かなり重たくなりますので、支柱はしっかりしたものを立てておきます。
株から15~20cm離れた場所に、市販の支柱を3~4本まとめてティピー型(アメリカインディアンの家・テント)にし、上部を紐で縛って固定します。
強い風が吹いても倒れないように、支柱は深さ30cm以上しっかりとさしましょう。いちょう芋の場合はツルを地面にはわせても良いのですが、フレーム(アーチ型の支柱)を活用すると、良い芋に育ちますよ。
栽培簡単・管理の仕方
山芋は乾燥に弱いので、夏場は土が乾燥しないよう株元にワラを敷いておくと良いですね。土が乾燥したら水をやるようにしましょう。
山芋の追肥について
植え付けの1ヶ月後から、月に1回追肥をして芋を太らせましょう。山芋には、養分をよく吸う吸収根が地表の近くにたくさん生えています。
化成肥料(窒素・リン酸・カリウムを含んだ配合肥料)を、株の周りにパラパラとまいておきましょう。
山芋を収穫しよう
山芋の葉が黄色く枯れ始めたら、収穫の適期です。いちょう芋は、霜に合う前に収穫しましょう。
まずは、地上に出ている部分を根元からハサミなどでカットします。続いて、枯れた地上部(茎や葉)ごと支柱を抜き取ってください。
土をスコップなどでほぐして、芋を傷つけないように気を付けながら掘り上げましょう。長芋、自然薯などは芋が長いため、途中で折らないように慎重に掘り上げてくださいね。
掘り上げた山芋は雨の当たらない場所に置き、少し乾かしてから土を軽く落とします。山芋は洗ったりせず、新聞紙などに包んで保存しましょう。
素朴な疑問Q&A
山芋に病害虫はつきますか
山芋はアブラムシやハダニ、ヤマイモハムシやヤマイモコガなどの害虫がつきます。アブラムシは綿棒で潰し、ハダニは水に弱いため葉裏に水をかけて駆除します。
ヤマイモハムシとヤマイモコガは、被害の多い7月頃を重点に薬剤を散布して防除しましょう。また山芋は葉渋病や、炭そ病にかかることがあります。
葉渋病や炭そ病は多湿によって発生するため、ツルをきちんと持ち上げるなどし、通気を良くしてください。発病した葉や茎などはすぐに取り除き、ゴミに出しましょう。
つくね芋の育て方を教えてください
基本的な方法は上記の通りです。ただ、つくね芋は寒さに弱いため、霜が降りるまでに収穫を終えておかないと傷んでしまいます。
つくね芋を保存する際には、もみ殻(もみ米のもっとも外側にある皮)を入れた米袋などに入れておきます。なるべく温かい場所にて、冬越しさせてあげましょう。
山芋栽培のまとめ
山芋の品種や栽培方法、育て方のコツやむかごについてご紹介しましたが、皆さんいかがでしたか。
山芋は深く土を耕してツルを支柱に絡ませ、月に一回追肥を行いながら育てるということが分かりました。むかごの収穫も楽しみながら、ぜひご家庭でお好みの山芋を栽培してみてくださいね。