さっぱりとした甘さとつぶつぶとした食感が特徴のイチジクは、そのまま食べてもよし、ジャムにしてもよし、いろんな美味しさを楽しめる果実です。
他の果樹と比べて栽培も簡単なので、家庭菜園にもぴったりですよ。手間もかからず病害虫にも強いので、初心者の方でも気軽に楽しむことができます。
今回はそんなイチジクについて、基本の育て方から甘い実を収穫するコツまで詳しく紹介していきます。
いちじく栽培の基本情報と栽培カレンダー
基本情報
イチジクは苗木から育てるのが一般的で、植え付け1年目は収穫しないということが重要です。植え付け時に剪定をせず育てると、枝の先端が伸びてしまい手の届かないところで結実し、収穫が困難となってしまいます。
管理も大変になってしまうので、植え付け1年目は収穫よりも土台となる樹を丈夫に育てることに注力しましょう。
イチジクは果樹にしては珍しく、受粉のために異なる品種を2本植える必要がありません。1本だけで実がなるので、気軽にはじめられるのも嬉しいですね。
美味しいイチジクを育てるためのポイントは、適切な時期の剪定です。イチジクは枝すべてに実をつけるため、そのままにしておくと一つ一つの実まで栄養が行きわたらず、味が落ちる原因となります。
さらには枝が混みあってくると日当たりが悪くなり、花芽が付かなくなってしまいます。枝をある程度剪定しておくことが、甘いイチジクを実らせるコツになります。
栽培カレンダー
植え付け:12月または3月
剪定:1月~3月
肥料:12~1月・6月・8~9月
収穫:6月~7月(夏果)/8月~10月(秋果)
イチジクは春から夏に実をつける夏果専用種と、秋に実をつける秋果専用品種、その両方の時期に成熟する夏秋兼用品種と、収穫時期によって3つに種類に分かれています。
夏果専用種の場合は梅雨時期と重なり、実が雨にあたるとどうしても腐りやすくなります。プロの農家でも栽培が難しいとされているので、はじめての方は秋果専用種が育てやすくおすすめです。
剪定は1~3月の寒い冬の時期に行います。イチジクの木は春から秋にかけて枝を伸ばし、実をつけるための栄養を蓄えていきます。
そんな時に枝を切り落とすと、実の生長を邪魔することになってしまいます。冬の時期であれば木の休眠期にあたり、負担も最小限に抑えられます。
いちじくの育て方
イチジクは畑や庭がなくても、鉢植えでも育てることができます。栽培スペースの違いから植え方や剪定方法が変わってくるので、鉢植えと露地植えに分けて紹介します。
鉢植えでの栽培
鉢植えの選び方と土づくり
根の生育が旺盛なので、植え付けから3年目までは深さのある8~10号鉢に1株育てます。用土は水はけと水もちの良い肥沃な土壌が適しています。
用土のブレンドは難しく手間もかかるため、市販されている果樹用の培養土を利用すると良いでしょう。
植え付け方
鉢の底に軽石を敷き、2/3ほどの高さまで土を入れます。苗木をポットから取り出し、根をほぐしながら広げていきます。
土の上に苗木を置いた後は、周りの土を被せ根づきやすいよう軽く押さえます。苗木を植えた後は、倒れないよう支柱を立てたっぷりと水やりをしましょう。
苗木の高さが土から20~30cmのところで、枝を切り落とします。植え付け時に剪定することで、コンパクトに育てることができ新芽も丈夫に育ちます。
剪定
植え付けから1年目の冬
それぞれの枝が30cm程度にまで短く切り、春に向けての生長を促します。木の外側についた芽の下を水平にカットすると、長さが整えやすいですよ。
植え付けから2年目の冬
枝が混みあっている部分を間引きます。左右に長く伸びた枝は、1~2芽ほど残して剪定しましょう。
露地植えでの栽培
土づくり
日当たりの良い場所であれば、比較的土壌を選びません。保水性や通気性を浴するため、腐葉土を混ぜ合わせておきましょう。
植え付け方
直径・深さともに50cmほどの植え穴を堀り、苗木を植えつけます。植えた後は、支柱を地面と垂直になるように立てて固定し、苗木の高さが40cm程度のところで切り詰めましょう。
剪定
植え付けから1年目の冬
主枝を3~4本程度残し、他はすべて先端を切り詰めます。残した主枝の先は少しだけ切り、枝を地面に向けてやや斜めに紐で誘引し固定します。
こうすることで木が横に広がって育つので、収穫や管理がしやすくなります。
植え付けから2年目の冬
主枝から伸びた枝の先端を切り、さらに分枝を促します。
一本仕立てで育てる
木を自然な形で育てる他、主枝を横一文字に仕立てる栽培方法もあります。これを「一文字仕立て」といい、露地栽培だけでなく植木鉢やプランター栽培でもできる整枝法です。
木の高さも低く保つことができ、管理や収穫が簡単になるので家庭菜園にもおすすめの仕立て方です。
やり方は1年目の冬に主枝を2本だけ残し、他の枝を全て剪定します。2年目の冬に残った2本の主枝を地面と水平になるように枝を誘引します。
その際は支柱やパイプを使って枝を固定すると、まっすぐと伸ばすことができますよ。2年目の夏ごろには、2本の主枝から上へ上へと複数の枝が生長し実をつけます。
水やりのタイミング
イチジクは乾燥に弱いため、土の表面が乾いたら水やりをしましょう。特に鉢植え栽培の場合は水切れを起こしやすいため、鉢底の穴から水が流れ出るほどたっぷりと与えます。
露地植えの場合は、基本的には自然の降雨任せで問題ありません。夏の日照りが続くようであれば、水やりを行ってください。
肥料の与え方
イチジクは新しい枝を伸ばしながら実をつけるため、生長のためには多くの肥料が必要となります。元肥だけでなく、生長に合わせて数度追肥を行いましょう。
化成肥料や堆肥などの有機肥料を12~1月、6月、8~9月に与えるのが効果的です。肥料を与える際は根元近くだと木が傷んでしまうため、少し離れた枝先の地面に混ぜ込みましょう。
収穫
イチジクの先端部分が割れてきた頃が収穫のタイミングとなります。下から上に向かって熟していくので、順次収穫していきましょう。
収穫時はいちじくの切り口から出る白い樹液に触れるとかぶれるおそれがあるため、素手での収穫には注意してください。
イチジクの実は熟しやすく、収穫時期を逃すと味や食感が急激に落ちてしまいます。熟れすぎたイチジクはジャムにすると美味しく食べれます。
いちじく栽培のQ&A
摘果は必要?
植え付けから3年目以降で十分に生長した木であれば、摘果は必要ありません。ただし枝先の小さな実は、大きくなりにくいので早めに摘み取りましょう。
こうすることで、他の収穫予定のいちじくを大きく育てることができます。目安としては、鉢植えの場合は一枝に2個、露地植えの場合は一枝に6個程度が良いでしょう。
ベランダでも育てられる?
日当たりが良好なベランダであれば、十分に育てることができます。伸びてくる枝をしっかりと剪定すれば高さ1mほどで収穫できるので、生活スペースの邪魔になりません。
ただし強風に弱い性質のため、高層階のベランダでは風除け対策が必要となります。
寒さに弱いイチジク、寒冷地での栽培は可能?
関東地方よりも北では露地栽培での冬越しは難しいため、鉢植えで栽培し霜や冷たい風にあたらないよう室内に移動させます。
耐寒性に優れた品種もあるので、栽培地域の気温によって育てやすい品種を選ぶと良いでしょう。
耐寒性の強いおすすめの品種
蓬莱柿 (ほうらいし)・ホワイトイスキア・ブラウンターキー・セレスト
いちじく栽培のまとめ
イチジク栽培は管理が大変で難しく思いがちですが、ポイントさえ押さえれば美味しいイチジクを収穫することができます。
スーパーで販売されているイチジクとは違い、木で完熟させたとろけるような甘さは格別です。まさにいちじくを育てた方にしか味わえない美味しさですね。
ぜひみなさんもいちじく栽培を楽しんでみてください。