夏に旬を迎える桃は、みずみずしい口当たりと優しい甘さが人気の果実です。子供も大人も大好きな桃ですが、買うとなると少し値段が張りますよね。
そんな桃をご自宅で栽培してみませんか?少々手間はかかりますが育て方のコツさえ掴めば、初心者でも美味しい桃を収穫できます。
ここでは桃の基本の育て方から注意したい病気や害虫の対処方法まで、わかりやすく紹介していきます。
桃の栽培暦
- 植え付け・植え替え時期:12月~3月
- 開花時期:4月~5月
- 収穫時期:6月~8月
- 剪定時期:12月~2月/6月~7月
株が休眠状態にある冬に植え付け、春にピンク色の花が咲きます。品種にもよりますが、梅雨から夏にかけて収穫時期を迎えます。
冬と夏に剪定を行う他、病害虫対策や追肥など一年を通して手入れが必要です。
初心者には難しい?桃の栽培難易度
桃は病気や害虫に弱く、剪定や摘果などこまめな手入れが必要なことから、家庭栽培は難しいといわれています。
初めて桃を育てる方は、栽培しやすく病気に強い品種を選ぶことが重要です。
育てやすい品種とは?
桃は1本の木で実がつきますが、「白桃」「川中島白桃」など白桃系の品種は花粉が不完全のため、受粉用の木を植える必要があります。
2本以上になるとそれだけ手間もかかるので、まずは1本で受粉できる品種がおすすめです。
また梅雨時期に収穫する「早生種」から梅雨明け以降収穫する「晩生種」まで、品種によって実の熟す時期が異なります。
晩生種は実が大きく糖度も高い傾向にありますが、病害虫被害が多く栽培が難しくなります。
早生種は小ぶりで甘さもやや控えめですが、育てやすいのが特徴です。晩生種にも劣らない美味しい品種もありますので、初めて桃を栽培される方は早生種を選ぶと良いでしょう。
ひめこなつ | 収穫時期:6月上旬 果重:120g前後 糖度が高く、果汁が多いのが特徴です。梅雨入り前に収穫できるので、病害虫の被害が抑えられます。 |
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大久保 | 収穫時期:7月上旬 果重:250g前後 育てやすく収穫量が多いため、家庭栽培用の桃として人気の大玉品種です。寒冷地でも栽培可能です。 |
武井白鳳 | 収穫時期:6月下旬 果重:250g前後 実が大きく甘みが強い品種です。収穫後も実の硬さが持続するため、日持ちが良いです。 |
北海道でも育つ!桃の栽培環境
気温
桃の生育適温は平均9度以上で、寒さに強く-15℃の低温にも耐えられます。鉢植えであれば北海道を含め全国で栽培が可能です。
ただし、厳寒地では冬の間は室内へ移動させるか、しっかりと防寒対策を行いましょう。
土・肥料
桃は水はけと水もちの良い土を好みます。
地植えは、植え付ける2週間前に苦土石灰をまき耕しておきます。腐葉土と堆肥を混ぜこみ土によく馴染ませましょう。
鉢植えは、市販の果樹用培養土を利用するのが便利です。ご自分でブレンドされる場合は、赤玉土(小玉)7:腐葉土3の割合が適しています。
日当たり
桃は日当たりの良い場所で育てることが絶対条件となります。
日照量が不足すると実のつきが悪くなり、味も落ちてしまいます。夏でも日差しがたっぷりとあたるよう育てましょう。
桃の栽培方法
地植え
土の中で広々と根を伸ばせるため、木も大きく生長します。たくさんの実を収穫でき、植え替えや水やりなどの手間も省けます。
鉢植え
桃は鉢植えでも育てられます。日当たりや気温など最適な場所に移動でき、コンパクトな分管理もしやすくなります。
ただし鉢の中で根詰まりを起こしてしまうため、2~3年に1度は植え替えが必要です。はじめは7~8号サイズの鉢に植え、最終的には10号サイズの鉢で育てましょう。
桃の栽培と育て方のコツ
植え付け方
苗の植え付け適期は11~3月ですが暖地では年内、寒冷地では春先に行うのが良いでしょう。ホームセンターや園芸店で販売されている苗木を、地植えまたは鉢植えにしていきます。
根についている余分な土を払い落とし、水をはったバケツに6時間ほど浸し吸水させてから植え付けます。栽培場所に植え穴を掘り、根を広げるようにして入れ浅植えにします。
植え付け後は、地上部から30~60cm程度の高さで枝を切り詰め、倒れないよう支柱で固定します。最後にしっかりと水を与え、根付きを良くしましょう。
水やり
鉢植えの場合は、表面の土が白く乾いたら底から水が流れ出るほどたっぷりと与えましょう。
地植えの場合は、基本的には自然任せで水やりの必要はありません。夏場の日照りが続くようであれば水をやります。
追肥
桃の生育段階にあわせて追肥を行います。2月にカリとリン酸が多い有機質肥料を与え、収穫後の9~10月に化成肥料を施します。
鉢植えだと水やりによって肥料が流れやすいため、実が大きくなる5月にも化成肥料を追肥します。
剪定
初心者の方はどこまで切って良いのか悩みますが、枝や果実に日光がよく当たることを心がけある程度は思い切りよく切って大丈夫です。
樹形はYの字になるよう仕立て、幹から出る太い枝を左右1本ずつ残し他は切り落とします。さらに先端の若い枝3本だけを残し、枝先から3分の1程度きり戻します。
剪定は冬に行いますが夏も生育旺盛になるので、徒長した枝を切り落とします。剪定することで風通しが良くなり、病気や害虫対策にもなりますよ。
人工受粉
花粉が少ない品種は人工受粉を行います。鉢植えでは花数が少ないため、品種に関わらず人工受粉をした方がより確実です。
7割ほど開花したら雄花を摘んで、筆や綿棒で花粉を採取し雌花へつけて受粉させます。
摘果
5~7月頃に未熟な果実を摘み取ります。これを摘果といい、数を厳選することで美味しい果実を収穫できるようにします。
生育が良い実を残し、40cmまでの長い枝では1本につき2果、20cmまでの枝では1本に1果、10cmまでの短い枝なら3本につき1果が目安となります。
袋掛け
摘果した後は、病気や害虫、強風などから実を守るため袋かけを行います。実がついている枝ごと袋にかけ、隙間がないようしっかりと結びつけます。
収穫1週間前に下から3分の1程度袋を破り、収穫3日前には袋をはずし日光に良く当てましょう。こうすることでより果実の美味しさがより増します。
収穫
甘い香りが出はじめ、果実が色づき耳たぶほどの柔らかさまで熟れてきたら食べごろです。木から自然と落果する直前が最も美味しい時期なので、ぜひ完熟した桃を味わってみてください。
種から育てる方法
桃を食べた後の種からでも育てられますが、発芽率が悪く苦労するかもしれません。発芽できても実がなるまでに年数がかかるため、一からじっくりと育てたい方向きです。
- 完熟した晩生種から種を取り出し、水でヌメリや果肉を洗い落とします。
- トンカチなどで硬い殻を割り中の種を採取します。
- 湿らせた水苔で種を包み密封したポリ袋に入れ、冷蔵庫で保管します。
- 2月下旬~3月頃、育苗ポットに種をまきます。
- 発芽までは土が乾かないように水やりに気をつけて管理します。
消毒は必要?気をつけたい病害虫対策
桃は一年を通して病害虫の被害を受けやすく、家庭栽培といえど消毒は欠かせません。
まずは注意したい害虫や病気についてチェックしていきましょう。適切な対策ができれば被害は軽減でき、薬剤も必要最低限ですみますね。
害虫
アブラムシ
葉の裏や枝につき栄養を吸い取るだけでなく、ウイルスを媒介し病気を引き起こす原因にもなります。見つけ次第、紙テープでぺたぺたと直接取り除きましょう。牛乳や木酢液を散布するのも効果的です。
カイガラムシ
白く殻のような見た目をした虫です。薬剤が効きづらいので、歯ブラシでこすり落とします。風通しの悪いと発生しやすいため、混み合った枝は剪定しましょう。
モモハモグリガ
葉の内部にもぐりこみ食害していきます。葉に渦巻状で茶色に変色した模様が現れたら注意してください。収穫後の秋に発生することが多く、薬剤を散布して防除します。
病気
縮葉病
雨が多く低温が続くと発生しやすい病気です。葉が縮れ赤色の火ぶくれ状態になります。一度かかると薬剤では治癒できないので、休眠期の芽吹く直前に薬剤を散布し防除します。
灰星病
実の表面に淡い褐色をした円形の病斑が現れ、2~3日で実全体に広がり粒状のカビがつきます。多湿条件が続くと発生しやすくなるため、水はけや風通しに注意してください。収穫の3週間前から薬剤を散布します。
黒星病
春や秋に雨が続くとかかりやすくなる病気で、葉や果実に黒色の小さな斑点がではじめます。進行すると斑点が広がりすす状のカビが密集するので、すぐに取り除き薬剤を散布して拡大を食い止めましょう。
桃栽培のまとめ
桃の栽培は手間こそかかりますが、自分で育てた桃の味は格別です。綺麗な花も楽しめるのでご自宅のシンボルツリーとしてもおすすめですよ。
ぜひみなさんも桃の栽培にチャレンジしてみてください。