家庭菜園・果物の栽培

【初心者】ぶどうの栽培・育て方のコツ(追肥・剪定・病害虫対策など)

夏から秋にかけて旬を迎えるぶどうは、味覚狩りの中でも人気の果物ですね。

育てるのは難しいと思われがちですが、ちょっとしたコツさえ掴めば美味しいぶどうを収穫できます。広い畑がなくても鉢植えで育つので、ベランダや庭先でもぶどう狩りが楽しめますよ。

今回はぶどうの栽培方法について、初心者の方でもわかりやすいよう順を追って紹介していきます。

家庭では難しい?ぶどう栽培の難易度


ぶどうは1本で実がなり植え付けから2~3年と短い期間で収穫できるので、ご家庭でも比較的栽培が容易な果樹です。

ただしぶどうの栽培難易度は、育てる品種によって大きく変わってきます。

初心者でも育てやすい品種

ぶどうの品種は大きく欧州種米国に分けられます。

欧州種は高品質な果実が特徴ですが、雨や湿気に弱く日本の気候では栽培が困難だといわれています。一方、米国種は品質こそやや劣りますが、病気にも強く育てやすい品種です。

初心者の方は米国種を選ぶと良いでしょう。それぞれの良いところを掛け合わせて作られた欧米雑種もおすすめです。

キャンベル・アーリー(米国種) やや小粒で甘みと酸味のバランスが良く、病気にも強い品種です。
デラウェア(米国種) 小粒で糖度が高く、丈夫で育てやすいので初心者向きです。
スチューベン(米国種) 蜂蜜のような濃い甘さが特徴です。東北地方での栽培に適しています。
マスカットベリーA(欧米雑種) 大粒でよく実がつき、欧米雑種の中でも栽培しやすい品種です。

施肥や剪定はいつ?ぶどう栽培暦

ぶどうは木が休眠期に入っている冬に植え付け、品種にもよりますが夏から秋にかけて収穫時期を迎えます。生長段階にあわせて行う追肥や剪定など、一年を通して管理が必要です。

植え付け:11月~12月・3月
開花:5月~6月
収穫:8月~10月
施肥(地植え):10月~11月(収穫後)
施肥(鉢植え):2月・6月(開花後)・9月(収穫後)
剪定:1月~2月

全国で栽培可能!ぶどう栽培の適地

気温

ぶどうの生育適温は15~30℃で、7℃以上あれば十分栽培できます。耐寒性が強いことから、品種を選べば日本中で栽培可能です。

土・肥料

排水性と保水性のある土であることが重要で、この2つを満たしていれば土質はあまり選びません。

ご自分でブレンドされる場合は赤玉土(小粒)8:腐葉土2の割合で混ぜあわせ、1株あたり200g程度の粒状肥料を馴染ませて使います。初めての方はぶどう栽培用の培養土を利用するのが良いでしょう。

日当たり・風通し

ぶどうは日光を好み多湿を嫌うため、 栽培場所は日当たりと風通しの良い場所を選びます。

また葉や枝に水分がつくと菌が発生し病気にかかりやすくなるため、簡単な雨よけや軒下を利用し雨があたらない環境で栽培しましょう。

ぶどうの栽培方法

庭植え(棚仕立て・垣根仕立て)


栽培スペースが確保できる方は、庭植えで本格的なぶどう栽培に挑戦してみてください。立派なぶどうがたくさん収穫でき、安定した収穫量が見込めますよ。

専用のぶどう棚を用意する必要は無く、カーポートや倉庫を利用した棚仕立てで栽培できます。柵やフェンスがあれば、垣根仕立てという横一面にぶどうを這わせて育てる方法もあります。

ぶどうの苗に支柱を立てつるを伸ばしていき、棚や柵のほうへ誘導し巻きつけていくだけなので、初めてでも簡単にできます。

鉢植え(あんどん仕立て)

鉢植えなら持ち運びしやすく、天候や季節によって置き場所を変えられます。収穫量は劣りますが、だいたい3~4房ほど収穫できますよ。

鉢植えの場合、通気性を良くするため2~3年に1度は植え替えが必要です。最初は8号ほどの植木鉢で育ていき、最終的に10号鉢に植えつけます。

仕立て方は、輪がついた支柱を利用するあんどん仕立てがおすすめです。生長が良い枝を1本だけまっすぐ伸ばしていき、2年目の冬から円形部分に枝を1~2周ほど巻きつけて誘引します。

初心者でも育つ!ぶどう栽培マニュアル

植え付け

ぶどうの苗にはさし木苗とつぎ木苗がありますが、初めて育てる方は耐病性の強いつぎ木苗がおすすめです。植えつけ時はつぎ木部分が埋まらないように注意してください。

庭植えなら植え付け場所に直径・深さともに50cmほどの植え穴を掘ります。鉢植えなら水はけを良くするため、鉢底石を敷きその上に用土を7割程入れます。

苗木は根をほぐしてから広げるようにして植えつけ、根付きが良くなるよう軽く手で押さえます。最後に支柱を立て、たっぷりと水を与えてください。

水やり

ぶどうは乾燥に強い植物のため、苗が根付いたら水やりは控えめの方がよく育ちます。庭植えでは水やりは必要ありませんが、夏の日照りが続く日には与えてください。

鉢植えは土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れでるぐらいたっぷりと与えます。夏は1日1回が目安ですが、冬は一週間に1回程度で良いでしょう。

追肥

庭植えは収穫が終わった10月下旬~11月上旬に、堆肥や化成肥料を与えます。鉢植えは2月、6月、9月を目安とし、年3回は緩効性化成肥料を施します。

ただし肥料が多いと、枝や葉ばかりが生い茂り肝心の実がつかなくなることがあります。与えすぎには注意し、適切な時期と量を守るようにしましょう。

芽かき

新芽が芽吹くころ1箇所から複数の芽が出ていることがありますが、もっとも生育の良い芽を残し他は摘み取ります。

この作業を芽かきといい、芽数を制限することにより残した芽へ養分が集中するようにします。

剪定

ぶどうの木は春に伸びる新しい枝に花穂をつけるため、1~2月に古い枝や貧弱な枝を切り取り樹形を整えます。ぶどうの剪定は、育てる品種に応じて切り落とす長さが異なるので注意が必要です。

まず樹勢が強い「ピオーネ」「巨峰」などは枝の元から4~8節を残し先端を切り落とす「長梢剪定」が適しています。一方樹勢が弱い「マスカットベリーA」「デラウェア」などは全ての枝を1~2節残して切る「短梢剪定」が向いています。

この時、安易に剪定するとぶどうの木が枯れてしまうため、芽を半分に切るよう節のところで切り取ります。これを「犠牲芽剪定」といい、剪定で枝が枯れるのを防止するための手法です。

摘房・袋かけ


ぶどうを全て実らせると養分が行き渡らなくなるため、開花し始めたら全体のバランスを見て房を切り落とします。これを摘房といい小粒種で20枚の葉に1房大粒種なら30枚の葉に1房が目安です。

残した房は虫や鳥に食べられないよう袋にかぶせます。雨風からも守られるので、病気の発生を抑える効果もあります。

収穫

ぶどうの房全体が色づき始めると実が熟したサインです。房の先端の実を一粒食べてみて、十分な甘みを感じたら収穫しましょう。

完熟した実は落ちやすいので収穫するときはハサミを使い、房の下に手をあてて切り取ります。

ぶどう栽培で注意したい害虫と病気


ぶどう栽培で最も注意したいのは病害虫への対策です。早期発見と適切な対処で被害を最小限に抑えましょう。

病気

べと病 葉に白い斑点が現われ、進行すると早期落葉してしまいます。
晩腐病 実が熟してきた頃に発病しやすく、黒色の小さな斑点が広がります。
黒とう病 葉・新梢・果実にかかりやすく、病班の中心部に亀裂が生じます。

いずれも多湿が原因で発病するため、枯れた葉や枝はこまめに取り除き、常に風通しの良い環境を保ちます。

病気にかかってしまった箇所は見つけ次第取り除きましょう。梅雨時期前には、専用の薬剤を散布し防除を徹底してください。

害虫

コガネムシ 葉を食害し、房が成熟してくると果実にも被害が及びます。
ブドウテラカミキリ 梅雨入り前に新梢を枯れさせ、実がつかなくなります。
ブドウスカシバ ハチに似た虫で、幹の中にもぐりこみ内側から食害し枯れさせます。

害虫は見つけ次第駆除しますが、1匹見つかると木全体に広がっている可能性が高いでしょう。8~9月の産卵期に薬剤を散布し、被害を受けた箇所はすぐに切除して焼却します。

ぶどうを種から育てる方法


食べた後の種からでも育てられますが、発芽させるのはプロでも難しいといわれています。一から育ててみたい方はぜひチャレンジしてみてください。

  1. 種に付いた果肉を水で綺麗に洗い流します。
  2. 水で濡らしたキッチンペーパーに種を包み、袋にいれて密封し冷蔵庫で保管します
  3. 10~12月ごろに育苗ポットにまきます。うまくいけば春に芽を出します。

ぶどう栽培のまとめ


ぶどうは育てやすい品種を選び病害虫対策を怠らなければ、初めての方でもチャレンジしやすい果樹です。

美味しい実を収穫できるだけでなく、インテリアグリーンとしても利用できますよ。夏の日差し除けとしても大活躍するでしょう。

ぜひ今年はご家庭で育てたぶどうを味わってみてください。