「家庭でのりんご栽培は難しい」と考える人は多いかもしれません。確かに厄介な病害虫が多いのですが、しっかりと対策を行えばご自宅でも美味しいりんごを収穫できます。
今はコンパクトに育てられる苗木も開発され、スペースが限られている住宅地でも育てやすくなりました。春に咲く白い花や、秋の黄葉など四季の移ろいを感じられるりんごの木は、シンボルツリーとしてもぴったりです。
ここでは初心者でも始めやすいように、りんごの栽培方法について詳しく紹介します。品種選びや病害虫対策など、上手に育てるコツをまとめているので、参考にしてください。
りんご栽培の基本情報
りんご栽培の難易度
りんご栽培の難易度はやや高いといわれています。栽培適地が限られており病気や害虫被害も多いので、栽培には苦労するかもしれません。
しかし栽培地の気候にあった品種を選び病害虫対策を怠らなければ、十分りんご栽培を楽しめます。
りんごの栽培暦
- 植え付け・植え替え時期:11月~12月・3月
- 剪定時期:1~2月・7~8月
- 開花時期:4月~5月
- 収穫時期:9月~11月
- 休眠時期:12月~3月
植え付け時期は、落葉後の11月から発芽前の3月が最適です。ただし真冬の作業は作業は株を痛める可能性があるので、厳寒期は避けましょう。
りんご栽培に適した気候
りんごは果樹の中でも特に寒さに強く-30℃前後まで耐えられます。栽培条件は年平均気温6~14℃と冷涼な気候を好み、温暖地での栽培は向いていません。
休眠期間から目覚めるために、7℃以下の低温に一定期間あてておく必要があります。さらにりんごの色づきを良くするため、秋口からの気温低下が欠かせません。
りんご栽培の適地と南限
沖縄などの暖かい地域では栽培が難しく、中国~四国地方まで栽培可能といわれています。寒冷地で育てるのに比べ多少色づきが悪くなってしまいますが、味には影響ありません。
他にも「年間水量が少ない」「昼と夜との気温差が大きい」地域がりんご栽培に適しています。
育てやすいりんごの品種
りんごは自身の花粉では実がつきにくいため、別の品種を同時に栽培し受粉させる必要があります。
しかし品種の相性によってはうまく実らない可能性もあるので、組み合わせに注意しましょう。「ジョナゴールド」「陸奥」などは、花粉の発芽率が悪いため受粉樹にはできません。
初めてでも育てやすく、病気にも強い品種の組み合わせを紹介します。
- ふじ×つがる
- ぐんま名月×つがる
ふじ | 甘みや酸味のバランスが良い、りんごの代表的な品種 |
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つがる | 酸味が少なく、甘い食感とジューシーさが人気 |
ぐんま名月 | 病気に強く、実つきが良い。甘みと酸味が特徴で、温暖地でも育てやすい |
1本で実がつく品種もありますので、気軽に栽培したい方におすすめです。
ヒメリンゴ | 食用には不向きなため、観賞用として人気の品種 |
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アルプス乙女 | 直径5cmほどのミニサイズで、果汁も多く実も食べられる |
鉢植えでも育つ!りんごの栽培管理
植木鉢の選び方
根がまっすぐ伸ばせるよう、深さ30cm以上ある8~10号鉢に1苗を目安に選びます。素材は通気性や通水性に優れている、素焼鉢がおすすめです。
土づくり
保水性と排水性が良ければ、あまり土質は選びません。鉢植えの場合は、市販されている果樹用の培養土を利用するのが良いでしょう。
ご自分でブレンドする場合は赤玉土(小玉)7:腐葉土3の割合で混ぜ合わせ、200g程度の粒状肥料を馴染ませて使います。
種から育てる
りんごは食べ終えた後の種からでも育ちます。発芽するには寒さにあてる必要があるため採取後は湿らせた水苔に包み、2~5月まで冷蔵庫で保管します。
しかし種からでは発芽が難しく、枯れやすい木にしか育ちません。収穫までかなりの年月を要するので、苗から育てる方法が一般的です。
苗木から育てる
本来りんごは樹高が高くなるのが一般的でしたが、矮性台木の開発によりコンパクトに仕立てられるようになりました。矮性台木だと樹高3m程度にしかならないため、植木鉢でも育てやすいですよ。
苗木はホームセンターや園芸店で販売されていますが、ネットだと直接専門業者から購入できます。
植え付け
地植えの場合は直径・深さともに50cmほどの植え穴を作ります。鉢植えの場合は鉢の底から2分の1程度まで土を入れておきましょう。
苗木の根をやさしく広げながら先端が下を向くように植え付けます。深植えにならないように注意し、接ぎ木の部分が地上へ出るようにしてください。
水やり
苗木が土に根付いてからは、土の表面が乾いてから水やりをする程度で良いでしょう。ただし開花から着果までは水切れを起こすと収穫量に影響するため、乾燥しすぎないよう注意が必要です。
鉢植えは乾燥しやすいので、1回の水やりは鉢底から水が流れでるほどたっぷりと与えましょう。地植えの場合は基本的には自然任せで良いのですが、暑さの続く夏場は水やりをしてください。
肥料・追肥
追肥は年2~3回程度施します。地植えの場合は11~2月の間と9月に、ゆっくりと効く緩効性化成肥料や油粕などの有機肥料を土に混ぜ込みます。
鉢植えの場合はさらに5月にも肥料を与え生育を促します。
剪定
りんごの木は、枝をまっすぐ上へ上へと伸ばして生長します。そのままにしておくと管理や収穫作業が難しくなるため、冬と夏に剪定を行います。
休眠時期である1~2月頃に枝が混み合っている箇所を間引きます。花芽は枝の先端につくため、強い切り詰めは避けましょう。
夏場は木の生長が旺盛になります。7~8月頃に新しく伸びてきた枝を切り詰め生長を抑えましょう。
剪定は樹形を整えるだけでなく、風通しも良くするため病気の発生を防ぐことができます。
人工受粉
異なる品種を並べて植えると自然に受粉しますが、より確実にりんごを収穫するために人工受粉をしましょう。
人工受粉といっても難しい作業ではありません。綿棒や筆を使って花粉を採取し、他品種の中心花へ花粉をつけるだけなので、初心者でも簡単にできますよ。
摘果
開花から約3週間ほど経つと、少しずつ果実が膨らみ始めます。1箇所にたくさん実るので、中心にある生育の良い実を1個だけ残し他は摘み取ってしまいましょう。
余分な果実を摘果することで株が疲れやすくなるのを防ぎ、残した実へ集中的に栄養が行渡るようにします。
収穫
実全体が赤く色づいてきたら、つけ根をハサミで切り取って収穫します。一度に食べきれないほど収穫できた場合は、新聞紙に包んで冷蔵庫で保存すると長持ちしますよ。
消毒は必要? 病気・害虫対策
りんごの木はデリケートで病気や害虫被害が多く、消毒は必要不可欠です。病害虫が発生しやすい4~9月は10倍希釈程度の薬剤を散布し、被害を最小限に抑えましょう。
かかりやすい病気
斑点落葉病 | 葉や果実に小さな斑点ができ、早期に黄色く変色し落葉してしまいます |
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黒点病 | バラ科に多く見られる病気で、葉や果実に黒い斑点ができ急速に拡大します |
うどんこ病 | カビ菌が原因で葉の表面が白くなり、光合成ができなくなり枯れてしまいます |
病気の多くはカビ菌が原因で、梅雨時期を中心に高温多雨になると発生しやすくなります。梅雨に入る前に効果の高い薬剤を散布し、しっかりと防除します。
他にも適切な剪定で風通しを良くし、土の水はけに注意するなど栽培環境を整えることも重要です。
水はけの良い土で育てていても、鉢植えだと生長するにつれ根詰まりを起こしてしまいます。湿気がこもりカビの発生源となるため、2~3年に一度の頻度で植え替えを行いましょう。
病気にかかっている部分は薬剤を使用しても治療できないため、見つけ次第切り取って処分します。
注意したい害虫
シンクイムシ | 新しく生えた枝や果実に侵入して食べつくしてしまいます |
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キンモンホソガ | 幼虫が葉の中に潜り込み、葉を食害します |
アブラムシ | 葉の裏側について吸汁し、木を弱らせるだけでなく病気の原因にもなります |
りんごを害虫から守るためには薬剤の散布も有効ですが、物理的に害虫の侵入を防ぐため果実ひとつひとつに袋かけを行いましょう。
専用の袋を用意しなくても、新聞紙を巻くなどで代用できます。袋かけにはりんごの色づきを良くする効果もありますよ。
リンゴ栽培のまとめ
りんご栽培では病害虫対策や剪定など、日々の手入れが欠かせません。初心者にはやや難易度が高くなりますが、手間隙かけて育てた果実を収穫できる喜びはひとしおです。
ぜひみなさんもりんご栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。