ホップはツル性の多年草で、松ぼっくりのような見た目が特徴の可愛い球花(きゅうか)を咲かせます。
ホップと聞くとビールを想像する人もいると思いますが、日差しよけのグリーンカーテンにしたり、フラワーアレンジメントにすることもできるんですよ。
今回はそんなホップの栽培方法や剪定のやり方、収穫のコツや楽しみ方などについてご紹介していきます。
ホップの基本情報と栽培適地

ホップは、アサ科のカラハナソウ属のツル性の多年草です。原産地はヨーロッパで、別名セイヨウカラハナソウとも呼ばれています。
推株と雌株がありますが、ビールに使用されるのは雌花に咲く松ぼっくりのような見た目の球花(きゅうか)だけです。
この球花に詰まっている“ルプリン”という成分が、ビールに香りや爽やかな苦みをプラスしたり、泡の持ちを良くしているのです。
関西~九州は難しい!栽培適地は東北&北海道
ホップは世界的にドイツやアメリカで最も多く生産されており、日本では岩手県がトップクラスの生産量だと言われています。
寒さに強い性質で、雨風が少ない涼しく冷たい気候を好むため、栽培は東北地方など寒い地域の方が比較的向いています。
ホップ栽培の難易度
ホップの栽培難易度は5段階で評価するとしたら☆2~3つです。初心者~中級者向けといったところですね。
栽培環境と栽培カレンダー

栽培環境(日光・適温や耐暑性・水はけ)
ホップは耐暑性はやや弱く、耐寒性の強い植物です。発芽温度は17~22℃となっています。
高温多湿が苦手なため、育成には西日が当たらない日当たりの良い場所や、排水性の良い場所が適しています。
Ph5以下の酸性の土壌より、Ph7以上のアルカリ性の土壌を好みます。プランターや鉢を利用してのベランダ栽培もできますよ。
栽培カレンダー

ホップは種からの栽培ではなく、苗からの栽培(株分け)が一般的です。植え付け適期である春頃になると、園芸店などで苗が販売されますのでチェックしてみましょう。
もしお友達にホップを育てている人がいたら、根を約20cmほど分けてもらって植えてみてもいいですね。
ホップは7~9月頃に開花します。雄花は黄色、雌花は柔らかな黄緑色の花を咲かせます。
雌花から球花を収穫できるのは、7月中旬~9月頃になります。球花が未熟な緑色の時に収穫しましょう。
ホップの育て方

ベランダOK!プランター選びと土作り
ホップをベランダなどで育てる場合は、プランターや鉢を利用すると手軽です。ホップは横に広がらない植物ですので、鉢ですと直径30cmの10号鉢がおすすめです。
プランターの場合は、45cm幅のプランターに1株植えることを目安にしてください。鉢植え・プランター栽培する場合、土は市販の培養土を利用すると簡単で便利です。
露地栽培と土作り
ホップはアルカリ性の土を好みますので、菜園に植える場合は、土に苦土石灰をまいてスコップなどでよくかきまぜておきます。
1~2週間ほど経過したら、石灰がよくなじんだ土に市販の化成肥料(窒素・リン酸・カリウムなどがバランスよく配合された肥料)をまいて、更に1週間ほどなじませましょう。
種まき
ホップは通常種からではなく、苗から育てます。根を掘り起こしていくつかに切り分ける、株分けからも育成することができますよ。
苗植え

プランターや鉢を利用する際は、器の底に鉢底石を敷き詰めます。その上から培養土を3分の1入れ、苗の根鉢を崩さないように気を付けながら、鉢の中心に苗を入れ込みましょう。
中心に苗を置いたら、苗の周辺に培養土を入れて、苗を安定させます。鉢の8分目まで培養土を入れて、軽く手で土を押さえたら、たっぷりと水やりをして、根と土を密着させましょう。
菜園に苗を植える際は、苦土石灰や化成肥料をまいてなじませておいた場所に、スコップなどで、こんもりと土を盛り上げた畝(うね)を作っておきます。
苗を畝に植えると、水はけがよくなりホップが良好に育ちますよ。畝の上部に、苗が入っているポリポットと同じくらいの穴をスコップなどで掘ります。
プランターの時と同様に、ホップの苗の根鉢を崩さないように気を付けながら、穴の中に苗を入れましょう。苗を入れたら土を足して、両手で軽く土を押さえましょう。その後、水やりをしたら植え付け完了です。
ツルの誘引方法

ホップはツルをフェンスや柱などに巻き付けながら、時には約10m以上も伸びていきます。そのため植え付けた後はツルが伸びやすいように、苗の側に支柱を立てておきましょう。
苗をフェンスの近くに置いておいても良いですし、市販のグリーンカーテンネットを活用しても構いません。
ホップの育成初期は、伸びたツルを麻紐などで緩めに支柱やフェンス、ネットに結び付けてあげるとスムーズに誘引ができますよ。
水やりについて

菜園に植えた露地栽培の場合は、地中に含まれている水分と、雨水のみでも十分成長してくれます。つまり水やりは、苗植え時の水やりだけで十分です。
しかし、プランターや鉢での育成の場合は土の表面が乾きやすいため、土が乾燥していたらたっぷりと水を与えてください。
ホップは生育期になるとどんどん水分を吸収して大きくなるため、こまめにチェックしてあげましょう。
暑い夏の時期は特によく観察し、水分が蒸発しにくい朝方と夕方の1日2回、土の表面が乾いていたら水をしっかりあげてください。
追肥について

ホップの育成が活発になる6月頃に追肥をしてあげましょう。土作りの時に利用した化成肥料を苗の周りの土に与えます。
水やりを兼ねて、規定量の液肥を1ヶ月に2~3回与えるのも良いですよ。育成が盛んな6月と、新芽が繁る前の2月。年に2回、同じ肥料を追肥してあげましょう。
剪定について

ホップは沢山のツルを伸ばしてしまうと、株の栄養が少なくなり育成が悪くなってしまうため、剪定が必要になります。
春頃にツルが多く伸びてきたら、しっかりしたものだけを4~6本残して剪定ばさみなどで付け根から刈り取っていきましょう。
こうすることで球花が付きやすくなりますし、ホップの育成を長く楽しむことができますよ。
ホップの葉や茎にはチクチクと刺さる剛毛が生えているため、作業の際は長袖の服や手袋をはめておくと安心です。
収穫しよう

収穫適期は7月中旬~9月頃です。松ぼっくりのような見た目の丸い花、球花の中をのぞいてみましょう。
若々しい緑色の球花。この中の根元部分に、黄金色の粒・ルプロン(苦みや香り成分)が発見できたら収穫の適期です。
球花の付け根を、ハサミで一つずつ丁寧に切り取って収穫しましょう。球花が熟すのを待って収穫をためらっていると、バラバラになって散ってしまいますよ。
球花はツルの先端に近い方により多く実りますが、植え付けた年の収穫量はやや少なめです。植え付けて2~3年経てば、収穫量も期待できるようになりますよ。
ホップの病害虫

ホップには剛毛が生えているため、虫が付かないイメージがありますが、春頃に新芽や茎葉にアブラムシが付きます。
アブラムシをそのままにしておくと、栄養を吸い取られて株が弱ってしまうので、すぐに専用の駆除剤をまいてください。
アブラムシの浸食が進むと、葉や枝などの表面が黒い菌糸で覆われる、すす病が発生する恐れもありますので注意しましょう。
素朴な疑問Q&A

ホップの活用法を教えて下さい
ホップは丈夫で太いツルが10m以上伸びるため、緑のカーテンに最適です。食用ですと球花を天ぷらやフリットにして頂いたり、ビールに浮かべて香りを楽しむこともできますよ。
ミントやレモングラスなどのハーブと一緒に球花をティーポットに入れてお湯を注ぎ、ハーブティーにすることも可能です。
クラフトではリースを作ったり、フラワーアレンジメントにもできますよ。乾燥させた球花は入浴剤にしたり、ポプリにしたりと活用法は様々です。
寒さが厳しい冬になり、枯れてしまいました
ホップは寒さに強い植物ですが、冬には地上に出ている葉は枯れてしまいます。しかし、土の中に生えている根っこが元気ならば、春には新芽を出してまた元気に繁ってくれますよ。
ホップは植え替えが必要ですか
ホップを栽培した翌年の3月にプランターや鉢の中の根の状態を見てみましょう。容器いっぱいに根が張り巡らされていたら植え替えした方が良いですよ。
株分けを兼ねて一回り大きいサイズの鉢、またはプランターに新しい土と共に植え替えてあげましょう。
ホップの栽培まとめ

今回はホップの栽培方法や剪定の仕方、収穫のコツや楽しみ方などについてご紹介していましたが、みなさんいかがでしたか?
ホップと聞くとどうしてもビールを思い出しがちですが、グリーンカーテンにも最適で、色々な活用方法があるということが分かりました。
「ウリ科の植物のグリーンカーテンはちょっと…」という方にも、ホップはおすすめですよ。ぜひご家庭でホップの栽培を楽しんでみてくださいね。