行者にんにくは山で修行する行者が、荒行に耐えるため食べられたことが名前の由来といわれています。
滋養強壮食材として注目を集めていますが、生長が遅く約5年以上の栽培期間を必要とすることや、増殖率の低さから「幻の山菜」と呼ばれています。市場流通も少なく希少価値の高い山菜をご家庭で栽培してみませんか?
丈夫で病気や害虫被害がほとんどありませんので、家庭菜園でも育てやすい野菜です。ここでは行者にんにくの栽培や育て方のコツについて詳しく紹介します。
行者にんにくの栽培基本情報
分類:ネギ属の多年草
植え付け・植え替え時期:4~5月・9~12月
開花期: 7月(植え付けから7~8年後に開花)
収穫期:4~5月
休眠期:8~9月
栽培難易度:★★★☆☆
行者にんにくは春を告げる山菜として親しまれ、北海道から近畿以北の高山や水湿地に自生しています。にんにくに似た強い香りが特徴で、しょうゆ漬けやおひたし、餃子の具など様々な料理に使えます。
夏になると茎の頂上にボール状の白い小さな花を咲かせ、暑さで徐々に地上部は枯れていき休眠期に入ります。葉や茎が枯れても根は生きているので、来春になれば再び株元から発芽します。
種から育てると収穫までに5~7年以上かかるのですが、ある程度プロが育てた成熟苗(3年生苗など)で栽培すれば2~3年で収穫できます。植え付けから早くに収穫したい方は、市販されている苗を購入して育てましょう。
九州でも育つ!行者にんにくの栽培適地
行者にんにくの自生地は北海道をはじめ、夏の平均気温が25℃以下の冷涼地域が主となります。しかし本来は山中で自生するほど丈夫なため、九州など暖地での栽培も可能です。
暖かい地域で栽培する場合は、上部に遮光ネットを張るなどして暑さ対策をしながら育てましょう。
行者にんにくの栽培場所
日当たり
行者にんにくは午前中のみ日があたる半日陰の環境を好みます。強い日差しに当たると葉焼けしてしまうので、西日の当たらない場所が望ましいです。
土づくり
行者にんにくの栽培には水はけの良い肥沃な土壌が適しています。
植え付けの2週間前までに堆肥や腐葉土をたっぷりと加え、しっかりとすきこんでおきましょう。弱酸性の土を好むため、アルカリ性の苦土石灰は不要です。
プランターで育てる場合は、野菜栽培用の培養土を利用すると良いでしょう。ご自分でブレンドする場合は、赤玉土(小粒)6:腐葉土4の割合で混ぜ合わせたものを使用します。
冬越し
耐寒性が強い山菜ですが、霜柱や土が凍る地域では防寒対策をしておくと安心です。
株元にワラや腐葉土を敷き詰め、雪と表土が直接触れないようにしましょう。プランター栽培の場合は、軒下や室内へ移動させてください。
行者にんにくの栽培方法
露地栽培
行者にんにくは強い日差しに弱いので、日中でも半日陰になる場所を選びましょう。水はけの良い土壌を好むため、幅60cm高さ10cmほどの畝で育てます。
畝立てすることで地面よりも高くなる分排水性が良くなり、根がよく伸びて育ちやすくなりますよ。
プランター栽培
深さ30cm・横幅60cm以上の深型プランターを準備します。株間は5~10cmほどで良いので、育てる株数にあわせてサイズを選ぶと良いでしょう。
栽培中は土壌の排水性と保水性を保つため、容器の底に鉢底石を敷き詰めておきましょう。地面とプランターの間にすのこやレンガを敷いておくと、熱がこもりにくくなります。
行者にんにくの育て方
種から育てる(発芽作業)
行者にんにくは8~9月頃が種まきの適期です。
発芽率が低いため、種をまく前に1日水につけたまま冷蔵庫で保管します。こうすることで休眠状態から目覚め、発芽率を上げることができます。
- 育苗ポットや育苗箱に用土を入れ、指で1cmほどの穴を作り種をまきます。
- 1~2cmほど厚めに土を被せ、たっぷりと水を与えます。
- 乾燥させないよう湿らせた新聞紙で覆い、日陰または半日陰で管理します。
- 土が乾いていたら湿る程度に水やりをします。
- 発芽後、草丈が5cmほどまで育てます。
苗・球根から育てる
成熟した苗や球根から栽培すると、収穫までの期間が短くより丈夫に育ちます。家庭菜園で育てる場合は、市販されている苗や球根からはじめると良いでしょう。
秋から春先にかけてホームセンターや園芸店でも出回りますが、元々の流通量が少なく取り扱っているお店は少ないかもしれません。そんな時はインターネットによる通信販売を利用するのも一つの手でしょう。
植え付け時期になると売り切れになることも多く、予約注文を受け付けているところもありますので、早めにチェックしてみましょう。
植え付け・植え替え
ポットから苗や球根を取り出す際は、根を傷つけないよう丁寧に行いましょう。直根性のため、根が切れてしまうと再生が難しく生育不良になってしまいます。
行者にんにくは密植したほうが元気よく育つため、株間は5~10cmとやや狭く植えます。植え穴に苗の先端が2~3cm見える程度に植えつけ、最後にたっぷりと水を与えます。
水やり
土の表面が乾いてきたら水を与えるようにします。地上部が枯れている秋から冬にかけては、つい水やりを忘れがちになるので注意してください。
プランター栽培では乾燥しやすいため、底から水が流れ出るほどたっぷりと与えてください。ただし水を与えすぎると根腐れを起こすので、必ず土の状態を確認してから行いましょう。
追肥
植え付け時に堆肥や腐葉土を十分に混ぜ込んでいれば、元肥だけで元気に育つので追肥は必要ありません。ただしプランター栽培では水やり時に土の養分も流れ出てしまうので、肥料切れになりやすくなります。
葉色や生育が悪くなってきたら、液体肥料を水やり代わりに与えましょう。油粕を株元に置くのも効果的です。
収穫
4月初旬から5月中旬頃に、葉の数が3枚以上になったら収穫目安となります。まだ葉が開いていない柔らかい若葉と茎を切り取りましょう。
株ごと引き抜いてしまうと二度と生えてこなくなることもあるため、必ず株元から2~3cmほど残しておきます。一度収穫すると次の収穫時期まで2~3年かかるため、収穫する株と残す株を分けておくと良いでしょう。
もしくは、下葉を2枚ほど残して収穫する方法もあります。葉を残すことで株が弱りにくく、上手に育てればほぼ毎年収穫することができます。
行者にんにくの繁殖方法(種まき・株分け)
行者にんにくの増やし方は、種まきと株分けがあります。種は7月頃に咲く花から採取しますが、植え付けから7~8年後にようやく花を咲かせるためかなりの時間を要します。
より簡単に増やしたい方は株分けがおすすめです。
行者にんにくは栽培して数年経つと、地下で球根が分かれそれぞれから茎を伸ばしていきます。この分けつした株を、丁寧に切り分けて増やすことを株分けといいます。
株分けは地上部が枯れた休眠期のうちに行い、土から球根を掘り出し根を傷つけないようハサミで切り離します。切り分けた子株を再度土の中に埋め込んでおくと、早ければ1年で収穫できるまでに生長します。
行者にんにく栽培のまとめ
行者にんにくは栽培期間こそ長いですが、ご紹介したポイントさえ押さえれば毎年収穫を楽しめるのが魅力です。
追肥や病害虫対策といった生育期間中の手間もかかりませんので、栽培初心者の方でもチャレンジしやすいですね。
収穫した行者にんにくは料理のアレンジも幅広く、面倒な下ごしらえも不要なので手軽に美味しく食べられます。ぜひみなさんもご自宅で栽培した行者にんにくを楽しんでみてくださいね。