北海道など寒冷地の山中で育つ山わさびは、ローストビーフなどの料理には欠かせない薬味として知られています。山わさびは繁殖力も強いため、栽培初心者にもおすすめです。
今回は、初心者にもできる!山わさびの栽培方法や育て方のコツ、害虫や株の増やし方についてご紹介していきます。
山わさび(西洋わさび・ホースラディッシュ)について
山わさびは、アブラナ科セイヨウワサビ属に属する、多年草植物です。別名、西洋わさび・ホースラディッシュ・レフォール・ワサビダイコンなど、様々な名前で呼ばれています。
原産国はフィンランドなどの東ヨーロッパで、日本には明治時代に渡来したと言われています。
山わさびは、主に根茎の部分を食用とします。アリルイソシオチアネートという辛み成分が含まれており、根をすりおろすと、鼻を刺すような強烈な刺激や辛みがあります。
その独特の辛みから、ローストビーフやステーキ、ソーセージにつける薬味として大活躍します。出汁やお醤油を加えて煮詰めれば、ワサビソースを作ることができますよ。
スーパーで販売されているチューブタイプのわさびの原料としても使用されていますね。
北海道では山わさびを荒くすりおろし、醤油をかけたものをご飯の上にのせて食べているそうです。若い葉を収穫したら、サラダにしても良いですね。
山わさびの栽培適地・環境・難易度
山わさびは北海道に自生していたこともあり、涼しく冷たい環境を好みます。あまり直射日光が当たらない、風通しの良い場所で育てましょう。
菜園での露地栽培のほか、ベランダでのプランター栽培や鉢植え栽培も可能です。育成旺盛な植物のため、ほとんど世話をしなくても簡単に収穫をすることができます。
山わさびは種球(たねきゅう)と呼ばれる球根からでも育成は可能ですが、栽培に少々時間がかかるため、初心者は苗からの栽培が簡単でおすすめです。
苗の植え付けはいつでもできますが、3~5月の春頃が栽培しやすい植え付け適期となっています。
山わさびは植え付けた年の11月頃~翌年の春にかけて、収穫することが可能です。株を大きく太く育てて、2年目以降から収穫するということもできますよ。
栽培適地(主な原産地)と栽培カレンダー
山わさびは冷涼な気温や水温を好む植物のため、日本では主に北海道で栽培されています。北海道では広く野生化していたため、アイヌわさびと呼ばれているそうです。
日本中どこでも栽培は可能ですが、ひんやりとした涼しい地域の方が育成しやすいでしょう。
栽培環境(日光・適温や耐暑性・水はけ)
山わさびの発芽適温と育成適温は15~20℃です。耐暑性も強く、耐寒性は非常に強いので冬越しも可能です。水はけの良い日向~半日陰に植えると、育成が良好になりますよ。
栽培難易度
山わさびは山の中に自生している植物なので、水はけの良い日向~半日陰にて育成すれば、少々ほったらかしにしておいても大丈夫です。
特に露地栽培の場合は、難しいお世話はほとんど必要ありません。栽培難易度は低く、初心者でも栽培が簡単です。
山わさびの栽培方法
種球から育てる場合
山わさびは根の部分である種球を植え付けて栽培することができます。ただし、種球からの栽培は苗植えよりも少々時間がかかり、初心者向きではありません。
種球の栽培適期は3~4月頃が育てやすくおすすめです。直径30cm以上の鉢には種球を1つ、65cmプランターには種球を2つ植えると考えましょう。
容器の底に鉢底ネットと鉢底石を敷き、野菜用培養土を入れます。用土の中心に穴を掘り、種球が土の中に隠れる程度に植え付けていきましょう。
露地栽培の場合も、土作りを終えた場所に植え穴を掘り、種球が土の中に隠れる程度に植え付けます。
数株植え付ける際は種球と種球の間隔を、30~45cmはとるようにしましょう。もし種球の大きさが大きめの場合は、約10cmくらいに切り分けてくださいね。
苗から育てる場合
苗の植え付けは年中できるのですが、育てやすい春の3~5月頃がおすすめです。苗の株数は、10号鉢の場合1株、30cmプランターは1株、65cmプランターは2株と考えてください。
この記事では、こちらの苗を育てる方法で解説していきます。次の項目で解説します。
土作りと準備物
鉢植え栽培の場合、鉢は10号鉢を準備してください。プランターの場合、直径30cmのものや直径65cmを準備します。
根が深くしっかりと育つよう、鉢もプランターも深さ30cm以上あるものだと良いですね。土は、市販の野菜用培養土を利用すると手軽で便利ですよ。
鉢やプランターの底に敷く、鉢底ネットや鉢底石も準備しておきましょう。菜園などの露地栽培の場合は、半日陰で水はけの良い場所を選んでください。
山わさびは酸性の土壌を嫌うため、植え付けの2週間前には菜園に苦土石灰を混ぜて、地中40cmの深さまでしっかりとかき混ぜておきましょう。
土壌の水はけが気になる場合は、腐葉土(広葉樹の落ち葉を原料とした植物性堆肥)を混ぜ込んでおくと、土壌を改良する効果が長持ちして良いでしょう。
苗を植え付けよう
鉢やプランターの底に鉢底ネットを敷き、水はけがよくなるよう鉢底石を敷き詰めておきましょう。
鉢底石の上から野菜用培養土を8分目の高さまで入れ、ウォータースペース(水やり時に一時的に水が溜まるスペース)をとっておきます。
苗が入っていたポリポットと同じくらいの穴を土にあけて、根鉢を崩さないように気を付けながら植え付けてください。
菜園に植える際も同じ要領で行います。苗と苗の株間は30cm以上はとるようにしましょう。
水やりや追肥などの管理方法について
水やり
山わさびは水を好む植物です。水切れを起こすと株が弱ってしまうので、注意してくださいね。
露地栽培も、鉢植え・プランター栽培の場合も、土の表面が乾いていたら水を与えるようにします。
追肥
山わさびはもともと山の中に自生していたため、生命力が非常に強い植物です。追肥をしなくても栽培はできますが、根を太く育てたい場合は追肥をし、定期的に株元に土寄せを行いながら育ててください。
苗を植え付けてから1週間が経過したら、株元に化成肥料(複数の肥料分を科学的に合成した肥料)をまき、土と混ぜて株元に寄せます。3~4週間に1度は、追肥と土寄せを行いながら育成しましょう。
山わさびを収穫しよう
山わさびは、地上部に出ている葉が黄色く枯れ始める11月~翌年の3月頃が収穫の適期です。大きな根を収穫したい場合はそのまま冬越しさせ、2年目から収穫することもできます。
収穫する際には、株元から約20cmの部分で一度葉をカットします。その後は、株の周りの土を軽く掘り上げ、根茎を手でつかんで引っ張り抜いてください。
葉っぱを食害する!山わさびの害虫
山わさびは害虫被害がほとんどない植物ですが、モンシロチョウの幼虫やハムシ類が葉を食害することがあります。また、ごくまれにうどん粉病にかかることもあります。
予防策
山わさびはアブラナ科の植物なので、幼虫がものすごい食欲で葉を食害しますが、食害するのは葉のみため、山わさびの根が傷んでしまうという心配はありません。
若い葉を食用として利用したい場合は、害虫被害に遭う前に摘み取ると良いですね。薄めた酢水を散布しても効果があるでしょう。防虫ネットを利用しても良いですね。
山わさびの周辺にネギやらっきょう、ニラなどをコンパニオンプランツとして植えておくと、ハムシ類を忌避できることもあります。
うどん粉病は栽培環境や肥料に問題がある時に発生するため、予防としては肥料を与えすぎないようにします。詳しくは栽培環境の章を参考にしましょう。
対処方法
食害された場合は、フンが落ちている場所周辺を探し、害虫を捕殺しましょう。防虫ネットを利用しても食害された場合は、どこかに侵入できる隙間があるか、害虫よりネットの網目が大きい可能性があります。
侵入できる隙間が無いかチェックし、害虫の大きさよりも網目が小さいものを選んで設置してください。
ハムシ類の被害に遭った場合は、市販の黄色粘着シートを使用すれば殺虫剤などを使用せずに捕殺することができます。
うどん粉病にかかった場合は、対処液であるストチュウを作ってみましょう。ストチュウを水で薄めて2~3日おきに散布すると、徐々に病気に強くなります。
- 酢100㏄:砂糖(白でも黒でもOK)100g:焼酎(35℃のもの)100㏄をビンに入れて混ぜ合わせます。
- 1日2回はビンを振り、これを約5日間繰り返して発酵させていきます。
- ストチュウを水で100~200倍に薄め、2~3日おきに山わさびの葉に散布します。
素朴な疑問Q&A
株分けはできますか?増やし方を教えてください
株分けは、もちろん可能です。ある程度大きく育った株を一度掘り上げ、適当な大きさに割って再び植え付ければOKです。
また山わさびは、収穫した根の部分を約3cmほど切りとっておくと、種球として利用できるため、簡単に株を増やせます。種球を再度植えておくと、1~3年後に再収穫できますよ。
水耕栽培はできますか
スーパーで山わさびを購入し、根の上部を2~3cm切りとって水に浸けておくと水耕栽培ができます。毎日水替えをしながら管理してください。
根が生え揃い、葉っぱが出てきたら土に植え替えましょう。株によっては育成の悪いものもありますが、上手くいけばそのまま育成~収穫が可能です。
畑わさびの育て方を教えてください
畑わさびはその名の通り、畑(陸)で栽培されていますが、畑わさび=山わさびではありません。葉も根の色も、まったく違います。
山わさびは市販のチューブわさびに使用されていますが、畑わさびは「本わさび(日本わさび)」と呼ばれ、高級品として区別されています。
畑わさびを植え付ける際には、苗を利用します。小石やプランター容器の側面を利用し、苗を置いて土を被せます。
土の表面が乾いたら水をやるようにし、窒素分が少ない肥料(リン酸肥料・カリ肥料など)を追肥しながら育てます。
2年ほどで収穫が可能です。優しく土から掘り起こしたら、手や包丁でひげ根を取り除き、お料理に使用しましょう。
山わさび(西洋わさび・ホースラディッシュ)の栽培まとめ
初心者にもできる!山わさびの栽培方法や育て方のコツ、害虫や株の増やし方についてご紹介していきましたが、皆さんいかがでしたか?
山わさびは生命力が強く、手間もかからないため、初心者にはおすすめの植物だということが分かりました。土の表面が乾いていたら、きちんと水やりをしましょう。
株分けをして、お友達におすそ分けをするのも良いですね。アレンジ次第でどんなお料理にも使える山わさびを、ぜひご家庭でも栽培してみてくださいね。