家庭菜園・野菜の栽培

なめこの栽培・育て方のコツ(長木栽培・短木栽培・失敗事例と対策など)

つるんとしたぬめりが特徴のなめこは、お味噌汁や和え物など食卓にあがることも多いきのこです。そんななめこをご家庭でも栽培できるのはご存知ですか?

なめこの栽培方法は、原木を使った自然に近いものから室内で育てられるものと様々あり、自分の生活にあった育て方が選べますよ。

今回はなめこの栽培方法や育て方のコツについて詳しく紹介します。なめこ栽培で起こりやすい失敗事例についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

なめこの栽培方法

おがくずを使った菌床栽培

菌床栽培とはおがぐずと米ぬかなどを混ぜて固めたものに、なめこ菌を繁殖させる栽培方法です。平箱やビンなどの容器に入れ、温度や湿度が管理されている室内で育てます。

生育が速く安定して栽培できるため、店頭に並ぶ多くのなめこがこの菌床栽培で育てられています。

木に菌を植え付ける原木栽培

なめこが育ちやすい木に穴をあけ、直接なめこ菌を繁殖させる栽培方法です。菌を植え付けた原木は、湿度が高く直射日光が当たらない環境で管理します。

原木の栄養分を分解して育ったなめこは、ぬめりが強くスーパーで買えるものとは一味違う美味しさですよ。

ただし収穫までに時間がかかるので注意しましょう。原木の中で十分に菌糸を蔓延させる必要があるため、収穫までに約2年以上必要となります。

手軽に育てられる栽培キット

いざなめこ栽培をはじめようとしても、一から道具を揃えるのは大変ですよね。初心者の方は、気軽に育てられる栽培キットから始めてみてはいかがでしょうか。

原木栽培用のキットならすでになめこ菌が繁殖しているので、難しく感じる菌の植え付け作業も不要です。収穫までの期間も短く、上手に育てればその年の秋からなめこを食べられます。

より気軽に室内で育てたい方には、衛生的で後始末も楽な菌床栽培用のキットが良いでしょう。簡単に育てられるので、お子様の食育にもぴったりですよ。

自宅でできる!原木栽培の始め方

なめこ栽培に適した原木

なめこ栽培用の原木はトチ・カエデ・ブナ・サクラ・クルミ等、広葉樹であれば大抵どんなものでも栽培可能です。

栽培シーズンである秋から冬にかけてホームセンターなどで販売されますが、ネット通販でも手に入ります。

原木の置き場所・温度

なめこは湿度が高く、直射日光が当たらない涼しい場所を好みます。寒さに強い一方暑さには弱く、40℃前後で菌が死滅してしまうので、夏場は注意しましょう。

ご自宅での栽培には裏庭や大きな木の下などがおすすめですよ。

長木?短木?栽培方法を選ぼう

原木栽培には「長木栽培」と「短木栽培」と2つの育て方があります。それぞれの特徴をまとめましたので、ご自分にあった栽培方法を選びましょう。

長木栽培

長さ1mほどの原木に種駒を打ち込んで育てる方法で、本格的な収穫時期は2年目以降の秋頃です。収穫までの年数がかかりますが、原木の寿命が長く4~5年ほど発生します。

短木栽培

太い木を輪切りにし、種菌を間に挟む栽培方法です。長さ30cmほどと短く切って使用するので、管理スペースが広く取れない方にも安心です。

長木栽培に比べ菌回りが早く初年度から収穫を楽しめますが、原木としての寿命は短く2年目以降の発生は徐々に減少します。

長木栽培の手順

種駒を植える

菌の植え付けは10月から桜が咲き始める頃までに行います。桜が咲く頃は空気中の雑菌が急速に増えるため、それまでになめこ菌を原木に蔓延させておくことが重要です。

原木に電動ドリルやキリを使い、樹皮面に菌を植える穴をつくります。深さ20mmほどで、縦約15cm・横約4cmの間隔でぐるりと千鳥状に穴をあけていきましょう。

そこに種駒を差し込み、トンカチを使って樹皮面と平らになるよう整えます。1本あたりの駒数は原木の太さ(cm)の3~4倍を目安とし、傷口や枝の近くには多めに接種しましょう。

仮伏せ

種駒を打ち込んだ後は原木を横積みにし、遮光ネットや枝葉など雨を通すもので全体を覆います。これを「仮伏せ」といい、菌を完全に活着させ菌糸の伸長を促すための初期管理です。

接種後一週間程度は毎日水をまき以降は週2~3回ほど散水してください。仮伏せでは原木を乾燥させないよう保湿管理が大切です。

本伏せ

仮伏せで発菌を促したら、原木の中で菌を蔓延させるため「本伏せ」を行います。仮伏せから約2ヵ月後、湿度が高く水はけや風通しの良い場所に並べます。

じめじめとした環境では雑菌が繁殖するので、雑草は刈り取り風通しを良くすることで原木が蒸れないようにしましょう。

梅雨期と梅雨明けには地面に接していた面を逆さにし、木全体に風が当たるようにしましょう。反転させることで、菌糸の繁殖を均一にする効果もあります。

短木栽培の手順

菌を植える

なめこの種菌に米ぬか・おが粉を混ぜ、水をいれ良く練ります。雑菌が入るとうまくなめこが育たないため、使い捨て手袋を着用しましょう。

おが粉:4ℓ
米ぬか:2ℓ
種菌:1,000cc
水:手で軽く握ったときに指の間から水がたれる程度

原木の切合面に混ぜ合わせた種菌を厚さ1cm程度で平らになるよう広げ、もうひとつの原木で挟みます。接合面に隙間があると雑菌が侵入するので、ラップやガムテープを巻きしっかりと固定します。

仮伏せ

固定した原木を地面に重ねて置き、直射日光が当たらないよう遮光ネットや枝葉で全体を覆います。梅雨明けまでは動かさず、原木の中に菌を蔓延させましょう。

仮伏せ後20日ほどは毎日水を与え、以降は一週間おきに散水します。原木が短い分乾燥しやすいので注意してください。

本伏せ

組にしていた原木の固定部分を外し、植菌した面を上にして地面に立てるように埋めます。仮伏せ時と同じく遮光シートで全体を覆いましょう。

この頃には切合面に白い菌糸が現れてきます。

なめこの発生と収穫

なめこの発生時期

なめこは気温18~17℃を下回りはじめると徐々に発生し、5℃以下になると終了します。発生がはじまった原木は動かすとなめこの成長が止まり、発生しなくなることもあるので注意してください。

乾燥した日が続くときは、木に水をかけて活力を与えましょう。一度に大量の水をかけるのではなく、じょうろを使って自然の雨に近い状態で水を与えゆっくりとしみこませます。

収穫タイミング

なめこの収穫は、傘が開ききっていないつぼみの状態がおすすめです。傘の裏側にあるゼラチン質の膜が、蓋のように覆っているとなお良いでしょう。

もちろん傘が開ききった大きななめこも肉厚で美味しいので、ぜひ食べ比べしてみてくださいね。市販のなめこよりもぬめりが強いので、収穫時に怪我をしないよう注意しましょう。

室内で育てよう!菌床栽培の始め方とコツ


菌床栽培は省スペースで効率的に育てられますが、種菌の植え付け作業など初心者には難易度が高いかもしれません。ご家庭で育てる場合は、すでに菌が植え付けられた栽培キットの利用がおすすめです。

菌床栽培のポイント
  • 栽培に最適とされる室内温度は15℃前後です。室内での栽培も10月~5月が良いでしょう。
  • 高温と乾燥を嫌うため、直射日光の当たらない場所で育てましょう。北向きの窓辺がおすすめです。
  • 菌床が乾燥しないよう、朝・夕たっぷりと水を与えましょう。

4~5日ほどで収穫でき、傘が開ききらないうちにナイフで株元を切り落とします。気温や水分管理を上手に育てれば2~3回ほど収穫が期待できますよ。

なめこ栽培の失敗事例と対処法


なめこ栽培で最も多い失敗事例は「なめこが発生しない」ということでしょう。なめこが発生するためにはいくつかポイントがありますので、ご紹介します。

原木にカビが生えている
なめこは他のきのこに比べてより多くの水分を必要としますが、水が多すぎると原木にカビが生じてしまいます。風通しを良くし湿気がこもらない場所で管理しましょう。

原木を動かさない
むやみに原木を動かすとなめこの成長が止まるだけでなく、発生しなくなることもあります。特に発生が始まる夏以降は動かさないようにしましょう。

夏場の高温と強い日差しに弱い
直射日光の当たらない場所で育てますが、夏場に強い日差しが照りつける場合は遮光シートで覆うなど、生育環境を整えましょう。

なめこ栽培のまとめ


なめこは一度収穫した後も続いて発生するので、長く栽培を楽しめるのが魅力です。肥料や農薬を使用せずに育てられるのも安心ですね。

初めて育てる方には、日々育っていく可愛らしいなめこの姿に感動することでしょう。ぜひみなさんもなめこ栽培に挑戦してみてくださいね。