宝石のように美しいラズベリーの果実は、そのまま食べてもジャムなどに加工しても甘酸っぱくておいしいフルーツです。
家庭で栽培するのに難しそうなラズベリーですが、病害虫に強くて繁殖力が旺盛なので、初心者でも簡単に栽培できます。
今回はラズベリーの育て方、特徴や種類、剪定(せんてい)方法など大事なポイントをご案内します。ぜひ参考にしてください。
ラズベリーの特徴と栽培の難易度
ラズベリーの日本名はヨーロッパキイチゴ、または西洋キイチゴと言います。バラ科のキイチゴ属に位置する低木性の果樹で、400種類以上の多種植物です。
ラズベリーは株元から新しい枝を伸ばしたり(シュート)、地下茎から枝を伸ばす(サッカー)繁殖力の強い植物です。
苗の植え付けから収穫まで約2年かかります。実のついた枝は翌年枯れてしまうので、毎年1~2回枝を整えてあげるのが栽培のポイント。
ラズベリーは年に1度だけ実をつける「一季なり」と、2回実をつける「二季なり」があるので苗を買う時はどちらのタイプかしっかり確認してください。
ベランダでのプランター栽培も可能です。
サッカー・シュートとは?
ラズベリーの根は地表に近い部分で横方向に伸び広がっていきます。その根が光を感じると、空に向かって新しく枝を伸ばすことがあります。この根から出てきた枝のことをサッカーといいます。
シュートは本株の根元から立ち上がってくる新しい枝のことを言います。
栽培環境・日当たり
夏場に西日が当たり過ぎない日当たりの良好な場所を選びましょう。暖地よりは寒冷地に適した植物ですが、基本的に環境に強い果樹です。
植え付け方法<種まきは省略して苗から育てよう>
初心者は苗を購入するのがおすすめです。苗の価格は種類や株の大きさによって違いますが、1株2,000~3,000円ほどで購入出来るでしょう。
ホームセンターや園芸店で、茎や葉っぱの様子をみて元気な苗を選んでください。ラズベリーの株は秋~冬にかけて出回ります。
植え付け時期
種類によって異なりますが、10~12月中旬までと3月が適期です。購入した苗の種類をチェックして、最適時期に植え付けしましょう。
地植えの方法
地植えの場合は、日当たりの良い場所を選びます。苗よりひとまわり大きな穴を掘り、堀り上げた土の量の20~30%の腐葉土と堆肥を混ぜ込みます。
植え付け穴に苗を植えたら土を戻して、水をたっぷり上げましょう。水やり後は、土の乾燥防止と苗の安定のため株元に堆肥を被せて軽く押さえてください。
複数の株を植える場合は、最低でも1m以上株間を開けましょう。
プランターへ植え付け
プランターの場合は、赤玉土小粒と腐葉土を混ぜた土を用います。(赤玉土7:腐葉土3の割合)
1株6号鉢以上の鉢やプランターを用意して、まずは水はけをよくするための鉢底石を入れます。次に混ぜ合わせた土を少し入れて苗を植えます。
再度土を敷き詰めて、プランターの底から水が漏れるくらいたっぷり水やりをしてください。
垣根仕立てにしたいなら支柱で誘導
いくつかの株を垣根のように列にして育てたいなら支柱を立てましょう。
植え付けは先ほどと同じですが、植え付け後、苗をすべて40cm前後の高さに揃えてください。
株間は1~2mあけて、支柱は5mごとに立てましょう。そして支柱間に高さ30cm、60cm、120cmの番線を張ります。
2年目の冬以降、剪定作業と一緒に枝を番線へ誘導してください。枝と番線と交わるポイントを紐で軽く結んであげます。
水やりと追肥のタイミング
基本的に、地植えの場合は水やりの必要はありません。日照り続きで株が萎びている時のみ、朝晩の涼しい時間帯に水をあげましょう。
プランターの場合は、土の表面が乾いたら水やりします。
追肥は3月までに50g/株、6月と9月に25g/株ほど与えてください。化成肥料、有機質肥料どちらでも構いません。
肥料をあげる時は、枝の広がりより少し外側の円周に施すことがポイントです。
枝を整える剪定(せんてい)方法
一季なりと二季なりとでは剪定方法が異なります。植えた苗がどちらのタイプかを確認して行いましょう。
剪定を行うことで枯れた枝を取り除いたり、分枝を促して収穫量を増やすことができます。
一季なり⇒剪定は年に2回
植え付け1年目は剪定しません。これは1年目に伸びた枝が翌年実を着けるためです。
2年目以降から剪定します。一度実を結んだ枝は枯れて、サッカーやシュートが伸びてきます。枯れた枝は、果樹が休眠時期中の1月から2月の間に付け根から切り取りましょう。
春になると実を着ける枝が30cm以上伸びてきます。密生すると風通しや日当たりが悪くなるので、重なり合っている枝を切り取りましょう。
また脇芽が出た方がより多くのラズベリーを収穫できます。枝分かれしているものは、枝先を摘心(てきしん)して脇芽を促してください。
枝分かれ部分から3~5つ芽を残して剪定ハサミでその先を切り落とすのがポイントです。
摘芯とは?
植物は放っておくと、大きくなろうとして養分が先端へ向かいます。摘芯とは、生長中の枝や茎、新芽を取り除くことで、花や果実の方に栄養を与えて発育を促す作業のことです。
二季なり⇒剪定は年に1回
1年目に伸びた枝に花が咲き、夏の終わりに実を着けます。その枝は翌夏にまた実を着けるので、切り取らないように注意しましょう。
翌年以降は、2回実を着けて灰色ぽく枯れた枝を切り取ります。1月から2月の休眠期に株元部分から剪定してください。
収穫方法
6月から7月にかけて収穫できます。熟すほど実は柔らかくなり、完熟後は傷みやすくなります。熟した実はどんどん摘み取りましょう。
収穫のポイントは、そっと抜くように摘み取ることです。強く引っ張ると、ラズベリーのつぶつぶがばらけてしまうので注意してください。
二季なりのラズベリーは、9月から11月にかけて2度目の収穫ができます。
摘んだ実をすぐに食べない時は、冷凍保存すれば後日使えます。
ラズベリーの増やし方
地植えの場合、ラズベリーは地下茎でどんどん増えますが、プランター栽培で増やしたいなら挿し木で増やすことができます。
緑の葉がついた枝を土に挿して増やす緑枝さしという方法で増やしましょう。
挿し木は6月頃に行います。まず葉っぱのついた枝の切り口を1時間ほど水に浸します。
そして小粒の赤玉土など清潔な土に、節を土に埋めるように挿しておけばO.K。しばらくすると根が出て新しい株に生長します。
ラズベリーにつきやすい病害虫は?
ラズベリーは他の果樹や野菜と比べて、普通に管理を行えば病害虫の問題はほどんどありません。
ハダニ、アブラムシ、コガネムシなどが発生する場合もありますが、数は多くないので早めに農薬などで駆除しましょう。
病害虫は雑草を生やさないようにすること、日差しや風通しを妨げないように剪定をすることでほとんど防げます。
ラズベリーの種類は?おすすめの品種
ラズベリーはレッド系の果実がなるものが多いですが、イエロー系、ブラック系などもあります。こちらでは、育てやすい定番品種をいくつかご紹介します。
ファンタジーレッド(一季なり)
イチゴのような極大粒の実がつきます。食べ応えがあって、日持ちもするおすすめ品種です。成長期は枝のトゲが気になりますが、大きくなると小さくなります。
マリージェーン(二季なり)
サイズは平均的なラズベリーより大きめです。甘くてほどよく引き締まった食感が楽しめます。
サマーフェスティバル(二季なり)
平均的なサイズの実がなります。ほどよい酸味が特徴でジャム作りにピッタリの品種です。
インディアンサマー(二季なり)
やせ地でも育てやすい繁殖性の高い品種です。実の大きさは中粒で、実付きがよいので初心者におすすめの定番品種。
ジョイゴールド(二季なり)
大粒の黄色い実がなります。ゼリーのような食感で甘いので生食にも向いています。
ブラックキャップ(一季なり)
実が赤から黒へ変わっていきます。黒っぽく完熟すると、甘みとコクが増すおいしい品種です。
色鮮やかなラズベリーを楽しもう!
ラズベリーの育て方を紹介しました。
ラズベリーは繁殖力が旺盛で病害虫にも強い果樹なので、家庭菜園初心者向きです。栽培のポイントさえ押さえて、たくさんの果実を実らせましょう。
生のラズベリーは、豊かな香りと甘酸っぱさが特徴。そのまま食べたり、ケーキの材料や彩りに添えてもO.K。食べきれないほど収穫したら、加熱をしてラズベリージャムにしてください。
育てる楽しみ、見る楽しみ、食べる楽しみが味わえるラズベリーをぜひ育ててください。