高温多湿を好むナスは、1000年以上前から日本で栽培されているなじみ深い野菜です。日当たり、風通し、水やりという条件さえそろえば誰でも簡単に育てられ、ベランダなどでプランター栽培もできます。
収穫期間も長いので、上手に管理をすれば夏から秋にかけて、新鮮なナスをおいしく食べれるのでぜひ挑戦してください!
この記事では、プランターや家庭菜園でできるナスの栽培手順やポイント、収穫のタイミング、かかりやすい病気や害虫の予防対策をくわしくご案内していきます。
ナスの特徴と育てやすい品種
ナス栽培に適する生育温度は30℃と高めで、発芽後は日当たりと風通しの良い場所で育ちます。その一方で、ナスは乾燥を嫌うので水やりは絶対に必要です。
育てやすくておいしい品種は?
長卵形品種…代表品種「千両二号(せんりょうにごう)」。環境への適応力が高く、日本全国で栽培されているナスの代表品種。
長ナス品種…代表品種「筑陽(ちくよう)」。暑さに強く、奇形が発生することも少ないので家庭菜園に適しています。
丸ナス…代表品種「早生大丸(わせおおまる)」。生育が旺盛で作りやすい大玉丸ナスです。固くて緻密ですが、加熱すると滑らかでキメの細かくなります。
米ナス…代表品種「くろわし」。実の数が多くて早い時期に収穫できます。ヘタが緑色の米ナスは、加熱しても肉崩れがしにくいのが特徴。
ナスの栽培方法
ナスの種まきは、まだ寒い2月初旬から3月にかけて行います。発芽させるには、朝晩の温度を約10℃ほど変動させて(約15~28℃)管理する必要があります。
初心者や忙しい人は、園芸店やホームセンターで苗を購入したほうがよいでしょう。苗を選ぶときは、連作障害や病気に強い接ぎ木苗(つぎきなえ)がおすすめです。
接ぎ木苗とは?
病気に強い台木(根)と、おいしくてたくさん実のなる茎葉をつなぎ合わせた苗のことです。接ぎ木苗は普通の苗と比べて2~3倍高価ですが、病気や連作障害などに強くて育てやすいのが特徴。
連作障害とは?
ナス科の植物を毎年同じ場所や土で栽培し続けると、土壌の質が低下して病気や育ちが悪くなる現象のことです。回避するためには、同じ場所でナス科の植物を4~5年栽培しない、土壌を改良する、土壌を入れ替える、そして連作障害に強い接ぎ木苗を使う、という方法があります。
種まき~苗まで
- 発芽適温:15~28度(温度変動があったほうが発芽する)
- 発芽日数:1週間から2週間
- 種まき時期:2月~3月初旬
ナスの種まきは、寒冷地は3月上旬、中間地であれば2月の中旬、暖地であれば2月初旬が適応時期です。種まきから植えつけ苗に生長するまで80~90日間かかります。
【準備するもの】
セルトレー・ポリポット4~5号・ナスの種
- セルトレーに育苗土を入れる
- 各セルに指で深さ1cm程度の穴を作る
- その穴に種を1粒~2粒まいて土を被せる
- たっぷり水やりをする
水やりをしたら暖かい場所に置いてあげましょう。発芽まで1~2週間必要です。市販の発芽育苗器を使うと温度がコントロールできるので管理が簡単ですよ。
また、ナスの種は嫌光性(けんこうせい)のため、光が当たってしまうと芽が出ません。種が見えなくなるまで土をしっかりかぶせてください。
嫌光性種子(けんこうせいしゅし)とは?
発芽するのに光を必要としない種のことです。トマト、きゅうり、かぼちゃ、ナスなどが属します。種の直径の3倍くらいの深さにまいて、土で光を遮断してください。
反対に、発芽するのに光が必要な種を好光性種子(こうこうせいしゅし)といいます。バジル、ニンジン、いんげん、セロリなどの種が属します。
発芽後~3ヶ月弱
本葉が2~3枚になったら4~5号のポリポットに移します。1ヵ所から2つの芽が出ていたら、生育のよい方を残してください。ポットに植え替えたら日の当たる暖かい場所に置き、毎日水やりをしましょう。
本葉が6~7枚になったら、いよいよ畑やプランターへ植え付けです。
土づくり~畝づくり
苗を植え付ける2週間前に、カルシウムとマグネシウムが豊富な苦土石灰(くどせっかい)100g/㎡をまいて耕してください。ナスは酸性の土壌に弱いので、アルカリ性の苦土石灰を加えることで酸度を調整できます。
その1週間後に堆肥2kg/㎡を施します。ナスは根を良くのばす植物なので、深く耕してあげましょう。初心者は園芸店で配合済みの野菜用培養土を購入してもO.Kです。
次は畝作りです。幅60cm、高さ20cmくらいの畝を作り、土の温度を上げるためにポリマルチシートで覆います。マルチシートは、土の乾燥や泥はねや雑草が茂るのを防ぎ、病気の予防にも役立ちますよ。
植え付け
苗の本葉が6~7枚になったら植え付けです。時期的にはゴールデンウィーク前後になります。もし室内で苗を育てている場合は、植え付けの10日ほど前から外気温に慣らしておきましょう。
- 植え付け前にポットごと水に浸して根に吸水させる
- 株を植える場所に穴を掘る(株間は50~60cmの間隔)
- 土がついた状態のまま苗を植えて土をかける
- 植え付け直後は株が不安定なので仮支柱を株元に差す
- 誘導のひもを軽く8の字に結んであげる
- 根元を軽く抑えて水やりをする
プランターやコンテナ栽培の場合
プランターなどで栽培する場合は、ホームセンターなどで販売されている野菜専用の培養土を利用しましょう。土の容量が20L程度の鉢に1株植えをするか、長方形のコンテナで株間を40cmくらい離して2~3株植え付けます。
- 排水性を良くするため、底に軽石や鉢底土をしく
- 培養土を7分目程度まで入れる
- ナスの苗が収まる程度の穴を掘る
- 土がついた状態のまま苗を植える
- 仮支柱を立てて誘導紐で結ぶ
- 土を数センチかけたら(容器の9分目位)十分に水やりをする
- 日当たりの良い場所へ置く
支柱立ての方法
品質の良いナスを収穫するためには、枝の勢いをコントロールすることが大切です。まず一番目の花が咲くまで、わき芽を見つけたら摘み取りましょう。そして一番花が咲く頃に、中心の主枝と勢いのある2本の側枝だけを残す3本立てにします。
それと同時に支柱も3本立てにしてください。立て方は真ん中に1本、側枝用に2本を両脇から斜めに交差させて真ん中の支柱に固定します。
枝の剪定
夏になって枝が込み合ってきたら、果実に太陽が当たるようにするために枝を整えてあげましょう。太く充実した枝を残して細かい枝は全て剪定。高さ50cmくらいまでの葉や、枯れた葉もこまめに取り除くことで病気の予防にもなります。
また主枝が150~200cmまで伸びたら、側枝を充実させるために摘心(てきしん)してください。まずは主枝がこれ以上伸びないようにトップを摘心。側枝も花が咲いた場所から2枚先の葉っぱを残して摘心します。
摘心とは?
新しく伸びてくる芽や茎を摘み取ることです。せっかく水やりや肥料を上げても、いらない枝葉ばかりが育っては意味がありません。摘心を行うことで果実に栄養を与え、収穫期間を長くすることができます。
水やり
“ナスは水で作る”と言われるほど、水やりは果実の成長に不可欠です。ナスの実がついた頃からは特に必要なので、夏場は朝と夜の2回行ってください。炎天下の水やりは根を痛める原因になります。必ず気温が低い時間滞に行いましょう。
追肥は2週間ごと
ナスは肥料を非常に好む野菜で、肥料不足になるとおいしい実を収穫することができません。追肥は非常に重要なので、欠かさずあげてください。
まず1回目の追肥は、植え付けから3週間目に行います。追肥は意識的に根の先端にあげるようにすれば効率的です。葉っぱの広がりと根の広がりはほとんど同じなので、葉の先端部分から直下した部分に肥料をあげましょう。
その後は2週間ごとに追肥します。もし開花した花のおしべより、めしべが短くなっていたら肥料不足の証です。
収穫のタイミング
株を十分に育てるためには、1〜2番目のナスは早めに収穫するとその後の出来がよくなります。収穫するタイミングは、花がついたあと15日~30日と開きがあります。購入した苗や種の品種の大きさからおおよその目安を知っておくのも一つの方法です。
写真のように、ヘタのすぐ下が白っぽいのはまだ実が成長中の証なので、もう少し待ちましょう。ヘタの下が色づき、皮にハリとツヤが出てきたら、その品種の大きさになっていなくても収穫してください。あまり実を大きくしてしまうと、株が疲れてその後の収穫量が落ちてしまいます。
また、ナスは養分を夜間に蓄えるので、早朝の収穫がおすすめです!
ナスに発生しやすい病気と病虫は?その対策と予防法
ナスによく発生する害虫としては、アブラムシ、テントウムシダマシなどがあります。また、ナスは高温多湿を好むのですが、土が多湿になり過ぎると、青枯病やうどん粉病などになりやすくなります。
早めに発見すれば対応できることが多いので、毎日注意深く観察してくださいね。こちらでは、主になりやすい病気や害虫の対策や予防法をご紹介します。
病気
【青枯病(あおがれびょう)】
ナス科の植物がなりやすく、葉っぱが青くなり急速にしおれて枯死します。
土壌性の細菌が根から感染します。水はけの悪い土地で多発するため、高畝などにして水はけ対策を行うことが大事。一度発生した畑は再発しやすいため、連作は避けましょう。
もし連作が避けられない場合は、抵抗性のある接ぎ木苗がおすすめ。発病株は株ごと抜き取って焼却処分してください。
【うどんこ病】
葉っぱやがくに、白い粉を振りかけたようなカビが発生します。
胞子が風に乗って運ばれて発病しますが、比較的発見しやすいので見つけたらすぐに摘み取って処分しましょう。うどんこ病用の薬剤を散布してもよいでしょう。
乾燥が原因で発生しやすいので、水やりを欠かさず、茂りすぎた葉は間引いて風通しと日当たりのよい環境を作ってあげます。
【褐斑病(かっぱんびょう)】
糸状菌(カビの仲間)によって起こります。多雨や多湿で発生しやすく、葉っぱに茶色の斑点ができて、やがて枯れていきます。
生じた病斑が周辺に病気を広げるので、発生した葉はすぐに取り除き、風通しがよくなるように間引きや剪定を行いましょう。
害虫
【アブラムシ】
植物の大敵アブラムシは、葉や新芽、つぼみ、花など柔らかい部分に群がります。アブラムシがうつすウイルスは一度かかると治らないので、見つけたら随時駆除をしましょう。
効率的な方法は殺虫剤の使用です。もし殺虫剤を使いたくないのなら、予防策としてシルバーのマルチング資材を敷いてみましょう。アブラムシは銀色を嫌う性質があります。
ナス栽培のまとめ
トマトやきゅうりと共に、ナスは代表的な夏野菜です。苗から植えつければ、栽培するのに難しい野菜ではないので、気軽に挑戦してみましょう。
光沢あるナスの皮は「ナスニン」というポリフェノールが豊富に含まれています。ナスニンには抗酸化効果があるので、生活習慣病の予防や美容効果が期待できますよ!ポイントを抑えて夏から秋までたくさん収穫してください。
植え付けから収穫までのポイント3つ
・整枝をして日差しをたくさん当ててあげよう
・収穫期間が長いので、肥料を切らさないようにしよう
・水やりは、暑くなったら朝晩2回!