大きくて食べ応えのあるしいたけはどんな料理にも合いますね。独特の風味と食感が人気です。
しいたけは自宅でも簡単に栽培できます。育て方も原木を使った本格的なものから室内の一角で育つものまで様々ですから、自分のスタイルに合わせて選べますよ。
この記事では自宅で育てるしいたけの栽培方法を詳しくご紹介します。家庭栽培での失敗事例もぜひ参考にしてください。
自宅で出来るしいたけ栽培
しいたけ栽培といえば森の木陰にたくさんの木が斜めに立てられ、そこできのこが育つのを待つようなイメージではないでしょうか?
森はきのこによって生態系を保っています。しいたけは枯れ木や落ち葉、動物の死骸などから栄養を得て大きくなります。
森が枯れ葉で埋もれず季節ごとにきれいな景色を見せてくれるのも、しいたけを始めとするきのこが分解処理をしてくれているからなんですね。
ここで注意したいのは、きのこは植物ではなく菌類であること。栄養分がない場所には決して育ちません。
きのこが育つ環境を維持できれば自宅でも手軽にしいたけ栽培ができますよ。
しいたけを栽培する方法
しいたけを栽培する方法は2つあります。
- 原木(げんぼく)栽培
- 菌床(きんしょう)栽培
詳しくご紹介しましょう。
原木栽培
原木栽培はしいたけが生育しやすい木に穴をあけ、種駒(菌糸の固まり)を植えて育てる方法です。
人の手で菌を植え付けはしますが、原木栽培は自然に近い栽培方法です。収穫したしいたけの風味も優れていますから、品質を求めるなら原木栽培が良いでしょう。
ただ収穫までに時間がかかります。木の中に菌を十分繁殖させる必要がありますから、収穫するまでに2~3年かかることもあります。
菌床栽培
市販されているきのこの栽培方法として現在主流なのが菌床栽培です。
菌床とはおがくずや米ぬかなど栄養となるものを混ぜ固めたものに、しいたけの菌糸を施したものです。室内でも安定して育てられ、短期間で収穫できるのが魅力です。
家庭用におすすめの栽培キット
初心者がいきなり原木栽培をするにも、準備段階から気合いがいるかもしれません。原木や種駒はホームセンターや園芸店で取り扱われていますが、原木に穴をあけるためのドリルや打ち込むためのハンマーなど、本格的なものが必要です。
初心者には栽培キットの利用がおすすめです。
原木しいたけの栽培キットであればあらかじめ菌が仕込まれており、すでに木の中に蔓延していますから収穫までの時間もかなり短縮できますよ。
菌床栽培も様々なキットが販売されています。
サイズもコンパクトですから室内でも十分育てられますね。収穫後の始末も簡単です。
しいたけの栽培時期
しいたけの栽培は季節というよりも温度が重要になります。寒暖差がしいたけの生育に大きく関わるため、春や秋から始めるのがおすすめです。
冬場は室内でも栽培できますが気温30℃を超えると菌が弱ってしまうため、真夏の生育は難しいでしょう。しいたけ栽培のために空調を完備した部屋を用意するなら別ですが、現実的には難しいですね。
しいたけの栽培環境
しいたけは直射日光の下では育ちません。菌が繁殖しやすいのは高温多湿の日陰ですから、屋外なら物陰や常に日除けできる場所が良いでしょう。
室内なら窓際をさけ、エアコンなどの風が当たらない場所を確保しましょう。栽培に適した温度は8~25℃で、発芽を促すには昼夜の温度差が10℃以上あると良い刺激となります。
原木栽培の手順
しいたけを原木で栽培するにはいくつか必要なものがあります。
- 原木
- 種駒
- 電動ドリル(またはキリなど)
- ハンマー
- 日除け(藁やブルーシート・遮光ネットなど)
しいたけが好んで生育するのはクヌギ・ナラ・カシワ・クリ・シデ類・カシ類です。自分で用意するのは難しいですから、ホームセンターなどで購入しましょう。
おすすめはクヌギとコナラです。
木の表面がゴツゴツしているものは、時間はかかりますが大きなしいたけが作れます。反対に表面がツルツルしたものは小ぶりですが生育が早いため収穫までの期間が短縮できます。
原木が店頭に並ぶのは気温が下がった秋から冬にかけて、栽培シーズン到来と共に販売が開始されますよ。
原木を入手したら以下の手順で種駒を植え付けます。
- 穴あけ
- 種駒打ち込み
- 仮伏せ
- 本伏せ
それぞれの手順に沿って詳しくご紹介しましょう。
穴あけ
1度に何本も原木栽培するなら電動ドリルが便利ですね。種駒のサイズにピッタリのキリも販売されています。
原木に打ち込む種駒の数は、原木の直径の3倍を目安にします。切り口が10cmなら30個になります。
20cm間隔で穴をあけ列に4~5cmの距離を取り、千鳥状にぐるりと1周穴を開けましょう。
種駒打ち込み
穴が開いたら種駒を挿し込みます。ハンマーで木の表面が平らになるように整えましょう。
ちなみに種駒を打ち込んだ所からしいたけが生える訳ではありません。種駒から伸びた菌糸が原木に全体に行き渡り、原木の切り口以外の場所ならどこからでも生えてきますよ。
仮伏せ(保湿)
原木に打ち込んだしいたけの菌がしっかり定着するように保湿することを「仮伏せ」と呼びます。
原木に水分を含ませ横積みし、藁やブルーシート・遮光ネットなどで覆います。ブルーシートを使う場合は完全密閉せず、少しだけ隙間を作り通気を確保しましょう。
直射日光の当たらない涼しい場所で、気温は5℃以上20℃以下をキープしましょう。原木がしっとりしている状態のまま3か月ほど保管します。
本伏せ
仮伏せで菌を活性化させたら、本伏せでさらにしいたけの菌を蔓延させます。本伏せの状態になると呼び方も「原木」ではなく「ほだ木」と変わります。
ポイントはほだ木にまんべんなく雨風が当たること。よく見かける斜めに立てかけたスタイルがこの本伏せの状態ですね。
ただ必ず斜めに立てかける必要はなく、スペースに限りがあるなら井桁状に積み上げても問題ありません。ここでも直射日光は避け乾燥6:湿気4を目安に散水をしたり風通しを意識しましょう。
収穫
しいたけの収穫のタイミングは春と秋の2回あります。原木から栽培した多くの場合は2夏経過した秋にしいたけが発生することが多く、その後4年程度は収穫が期待できます。
傘の裏にヒダが確認出来るようになれば収穫の合図です。根元から収穫しましょう。
菌床栽培の手順
菌床栽培は小さなスペースでも短時間で効率よく収穫でき、1年中栽培できるのも魅力です。場所も時間も取らず室内で手軽に育てられますから、初心者にもおすすめですよ。
家庭で栽培するなら予め菌が植え付けられている栽培キットを購入しましょう。
菌床栽培の手順をご紹介します。
- 菌床を購入し開封する
- 栽培容器または袋に入れる
- 直射日光が当たらない場所に置く
- 菌床が乾燥していないかこまめにチェックする
- 乾燥時は霧吹きなどで水分を与える
- 10日から2週間ほどで収穫
菌床は2~4回ほどの収穫が期待できますから、1度目の収穫後は次のしいたけを育てるために菌床のメンテナンスをします。ポイントは休養と水分補給。
1回目の栽培で消耗した分を取り戻すまで、水分を補給しながら2週間ほど休養させます。その後たっぷりの水に8~15時間ほど浸け込み、また1回目と同じ要領で栽培します。
回数を重ねるごとに収穫できるしいたけは小ぶりになっていきますが、味や風味は変わりません。ご家庭で食べる分は十分賄える量が収穫できますよ。
しいたけ栽培の失敗事例と対処法
しいたけ栽培で気になるのは「果たして菌はしっかり蔓延しているのか?」。しいたけが芽を出すまではずっと半信半疑でしょう。
思っていたよりも小さいサイズだった場合は、栽培途中の何がいけなかったのかと不安になります。
しいたけ栽培の失敗事例とその対処法をご紹介します。
菌床にカビが生えた
しいたけも菌から育てますから、カビや雑菌も菌床の環境は居心地が良いはずです。生育条件によっては青カビや黒カビが生えてしまうことも。
まず温度が高すぎないか湿気が多すぎないかをチェックしましょう。1回目の収穫で菌床にしいたけの柄部分を取り残すと、それを栄養としてカビ菌がよりついてしまいます。
収穫時ははさみやカッターなどを使い菌床にしいたけの柄を残さないようにしましょう。
原木にしいたけが生えない
原木は菌床に比べて生育が緩やかですから収穫まで時間がかかります。とはいえいつまで待っても何も出て来ないとなれば不安ですね。
自然に生えるしいたけは季節の変わり目の長雨と、温度差によって菌が活性化されますから、もう1度浸水を施し発芽を待ちましょう。
置き場所の気温などもチェックして適温になっているか、乾燥していないか日々の確認も大切です。
生えてくるしいたけが小さい
しいたけにしてはやけに小さいものばかり出てきたとしたら、気温が高いせいで生育が早まったのかもしれません。一気に生育が進めばその分栄養は分散され、小ぶりのものばかりになってしまいます。
適度に間引きをして適温を心がけましょう。
しいたけ栽培のコツ
しいたけ栽培のコツは適度な刺激です。たっぷりの水に浸けてみたり、朝晩の寒暖差が大きな刺激となり生育に発展します。
ずっと同じ環境下で暮らしていると菌の活動も停滞します。刺激を与えのんびりしている菌が驚いて活発に活動するよう促します。
菌床栽培の場合はトントンと軽く叩いても刺激になりますよ。
しいたけの栽培・育て方のまとめ
気長に自然に近い方法で栽培するか、小スペースで効率良く育てるか、しいたけ栽培は自分の生活スタイルに合わせて選べます。
栽培のポイントは置き場所と湿気、それに適度な刺激です。菌を寝かせたり活性化させたりすることで充実したしいたけが収穫できますよ。
ニョキっと現れる姿は初心者には感動ものです。ぜひ気軽に試してみてください。