「暑い夏に食べたい果物は?」と問われたら、一番に「スイカ!」と答える人も多いかと思います。
食欲が減退しやすい暑い夏でも口にしやすいですし、果糖やブドウ糖が多く含まれるので甘くておいしいですよね。
大きく育つので、栽培するのは一見難しそうですが、土作り、摘心(てきしん)、人工授粉、のポイントを押さえれば、初心者でも気軽にチャレンジできます。
小玉スイカであればプランター栽培も可能なので、この夏に向けてぜひ家庭で育ててみましょう。今回は初心者向けに、苗から育てる方法を分かりやすくご案内します。
スイカの特徴と栽培時期
スイカは日当たりが良く、23~30℃の高温で乾燥する環境を好みます。水はけをよくするためにも畝(うね)栽培するのがよいでしょう。
種まきは4月から5月上旬までが適期です。ただし発芽するまでの温度環境のコントロールが少し面倒なので、家庭栽培ビギナーの人は園芸店でスイカの苗を購入することをおすすめします。
苗の植え付け時期は5月上旬から6月上旬が適当です。大玉種の場合、株と株の間が1~1.5m必要とするため、菜園の大きさに合わせて苗を購入しましょう。
ベランダなどでプランター栽培をしたい人は、小玉種がおすすめ。
また、雨に当たると実のつき方が悪くなるので、梅雨の時期はトンネルで覆うなどの処置が必要です。
スイカ栽培に適した土作り
苗を植え付ける2週間前から土作りスタートします。
スイカは同じ土壌で連作をすると土壌障害から病気にかかりやすくなります。同じウリ科の植物を植え付ける時は、4~5年の期間をあけてください。
植え付け2週間前に、100~120g/㎥の苦土石灰(くどせっかい)をまいてよく耕しましょう。アルカリ性の苦土石灰をまくことで、スイカの好きな中性の土壌に近づけてくれます。
その1週間後、植え付け予定の場所に深さ30cm、縦横30~40cmの穴を掘ります。穴の底に堆肥2kgを入れて、再度土を被せますが、その土に50g程度の化成肥料を軽く混ぜてあげます。
最後に水はけをよくするために、幅60cm以上、高さ15cmの畝を作ります。
畑や菜園へ植え付け
ホームセンターや園芸店で購入した元気な苗を植え付けます。
苗を選ぶときは、本葉が4~5枚、茎がしっかりしていて、葉っぱに虫食いや病気の痕跡が見られないようなものを選んでください。
植え付ける日は、天気がよくて気温、地温ともに上がっている日中に行いましょう。関東地方であれば、5月上旬が適期です。
【植え付け方法】
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- 植え付け予定場所に、ビニールポットと同じ程度の穴をほる
- 根が傷つかないように、ポットから苗をていねいに取り出す
- 植え付け穴に苗を植える
- 一番下の子葉が埋まらないように、浅めに植えて土を被せる
- ジョロで水をたっぷりあげる
プランターへの植え付け~支柱立て
プランター植え付け
小玉種のスイカであればプランター栽培も可能です。プランターは幅60cm以上、根の生長も旺盛なので深さ20cm以上の大型を用意してください。
【用意するもの】
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- 大型プランター:1株あたり1プランナー
- 野菜用の培養土
- 鉢底石
- スイカの苗
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【植え付け方法】
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- 水はけをよくするため、プランターの底に鉢底石を入れる
- 培養土をプランターの縁から2~3cm下まで入れる
- 植え付けの穴を掘る
- ビニールポットから出した苗を穴にいれる
- 土を被せる
- 水が下から滴るまでたっぷりあげる
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支柱立て
プランターからツルがはみ出て、地を這うスペースがあれば支柱は必要ありません。しかし、べランダでの栽培であれば、空中へツルを誘導するために支柱立てを行いましょう。
最近では空中栽培用の支柱やネットも販売されているので、そちらを使ってもO.Kです。
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- 時期⇒本葉が6~7枚になる頃まで
- 支柱の本数⇒150cm 3~6本、50~80cm 4~10本(鉢やプランターの大きさによって異なる)
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摘心(てきしん)
摘心とは、生長する茎やツルの先端を適度に摘んで、花や実に栄養が行き渡るようにコントロールすることです。
スイカのツルは、放っておくとどんどん伸び続けます。スイカの実がおいしくなるように、下記のように摘心してください。
【スイカのツルの摘心ポイント】
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- 親づるが本葉5~6枚になったら、親づるの先端を摘心する
- 株もとに近い第1節の子づるを切り取る
- その他の子づる、孫づるは伸ばす
- 土の上にワラを敷いて、それぞれのツルが絡まないように適度に離して配置する
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人工授粉~摘果
人工授粉
スイカは雌花(めばな)と雄花(おばな)、2種類の花が咲きます。確実に着果させるためにも、雄花の花粉を雌花に付けて人工授粉をしましょう。
花の下がプックリ丸くなっているのが雌花、それがないのが雄花です。子づるに咲いた2~3番目の雌花に雄花を授粉させます。
大切なことは早朝に行うこと。雌花はその日に咲いたものしか授粉しません。雄花も当日 or 前日咲いた新鮮な花粉がベストです。
授粉日を目安に収穫をするので、授粉させた日付を札などに書いて、雌花の近くにくくりつけておきましょう。
摘果(てきか)
授粉に成功した花は実になり大きくなっていきます。1本の株に実がたくさんついてしまうと、養分が分散して各果実は養分不足となり実が小さくなります。
摘果とは、果実を確実に大きくおいしくさせるために、不要な果実を摘み取る作業のことです。
目安としては、子づる1本あたり1個、1株に最高3個まで。それ以外の果実は、卵大の大きさになったら摘果して、残りの果実を大事に育てましょう。
肥料の追加(追肥)と水やりについて
追肥
追肥は実が着いた後に行います。
畑や菜園の場合は、果実がテニスボールほどのサイズになったら、株元から10cm離した外周に化成肥料30gを軽く土と混ぜて与えます。
プランターの場合は、1株あたり20gの化成肥料を土に軽く混ぜて与えましょう。
水やり
植え付け後はたっぷり水やりをしますが、その後は土の乾燥が目立ったらあげる程度で構いません。
特に収穫時期の10日前になったら、水やりを控えて乾燥気味に育てましょう。与える水分をおさえることで、甘いスイカができます。
玉直しと収穫時期
玉直し
形と色のよい実にするために、スイカの実の位置を時々直してあげます。
収穫の1週間前には、日に当たっていない白っぽい部分を太陽に向けて着色させてあげましょう。
プランターの場合は、果実がテニスボールくらいになったら紐やネットを使って支柱から吊り下げます。果実全体に太陽光が当たるように、ときどきプランターの角度を変えてあげましょう。
収穫のタイミング
収穫時期は品種によってことなります。購入した苗のラベルを確認しておきましょう。
小玉種は開花してから35日前後、大玉種は開花後45~50日が一般的です。
授粉させた日の記録をもとに、収穫が近くなったら水やりを控えて毎日観察してください。
授粉日の記録から収穫する以外にも、「手のひらでスイカをたたくと鈍い音がする」「着果した節が少し枯れてきた」などを目安にしてもいいでしょう。
病害虫の予防と対処
病気
一番心配なのが、ウリ科の作物になりやすいつる割病です。つる割病になると、果実が肥大中にツルや葉が急に枯れてしまいます。
この病気は、土壌のカビが根から侵入することで発生します。
ウリ科作物を連作すると起こりやすくなるため、ウリ科の連作は避けて、最低でも4~5年あけるように心がけましょう。
発生したら治すことができないので、根ごと抜き取り他の株に感染しないように処分してください。
害虫
害虫はアブラムシ、ハダニの被害が心配されます。一番の予防法は、トンネル栽培や防虫ネットでカバーすることです。
早期発見すれば数も少なく、簡単に駆除できるので、観察を怠らないようにしましょう。
育てやすいスイカの種類
最後に育てやすいスイカの種類を幾つかご紹介します。スイカは大玉、小玉に分かれます。丸い球型が一番多いですが、楕円形のものもあります。
大玉スイカ
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- 祭りばやし(8~9kg・赤肉):着果率が高く、変形果の発生が少ない。果実がしまってシャリシャリ感がある。
- 縞王(7~10kg・赤肉):育てる地域を選ばず、大玉スイカの入門種と呼ばれるほど栽培しやすい。
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小玉スイカ
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- 紅小玉(2kg前後、赤肉):肉質が細かく、糖分の多いスイカ。着果率が高い。
- ニュー小玉(2kg前後、黄肉):黄色い果肉のスイカ。上品な甘さが人気。
- マダーボール(2.2kg前後、赤肉):楕円形のコダマ。適度な甘さで果肉が引き締まっている。
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コツをつかんで甘いスイカを収穫しよう!
家庭菜園ビギナーの人でも作りやすいスイカの栽培方法をご紹介してきました。
スイカ栽培は、土作り、摘心、人工授粉、摘果というポイントとコツがわかれば、水やりをあまり気にすることなくすくすくと育ってくれます。
ツルが伸びても十分な広さの菜園がある人は大玉スイカを、太陽光が差し込むようなベランダがある人は、プランターで小玉スイカにぜひチャレンジしてください。
今年の夏は、冷たくシャリっとした自家製スイカを、家族やお友達と楽しく味わいましょう!