里芋は独特のぬめりとねっとりとした食感が特徴で、日本では古くから縁起物としても親しまれてきました。
畑で栽培するイメージが強い里芋ですが、実は家庭菜園でも簡単に育てることができます。栽培の手間がかからず1株からたくさん収穫できるので、初心者にもおすすめの野菜です。
ここでは里芋の基本の育て方から失敗しやすい例など、初めての方でも分かりやすく紹介します。
里芋栽培の基本情報と栽培カレンダー
基本情報
里芋は種芋が生長するにつれ、まわりに小芋・孫芋がだんだんと増えて大きくなります。普段私達が口にしているものは、根ではなく茎が生長したものです。
生育適温は25℃~30℃で高温多湿を好み、夏の暑さにも負けず大きく生長します。栽培期間は長いですが、特別な技術は不要なので放任栽培にも向いています。
病気や害虫にも強く、無農薬で育てることができますよ。ただし乾燥には弱いので水切れには注意しましょう。
栽培カレンダー
植え付け時期:3月下旬~6月上旬
収穫時期:9月下旬~11月下旬
里芋は乾燥と寒さに弱いため、気温が十分暖かくなってから植え付け、霜が降りる前に収穫しましょう。
里芋の育て方
土作り
土壌の適正な酸性度はpH6.0〜6.5の中性で、保水性の高い粘土質の土を好みます。初心者やプランター栽培の場合は、市販の野菜用の培養土を利用するのがおすすめです。
地植えの場合は、植えつける2週間前までに苦土石灰を適量散布して耕します。1週間前には元肥を入れて再度深く耕しましょう。
種芋から育てる
里芋栽培では、まず植え付け用の種芋を準備します。ホームセンターや園芸店でも販売されていますが、市販されている食用の里芋を使っても問題ありません。
種芋の良し悪しが生育に大きく影響するので、種芋選びには注意が必要です。傷がなくふっくらとした形の良い大きな種芋(重さ40~60g程度)を選びましょう。
発芽しているものはそのまま土に植えることができますが、まだ芽が伸びていない場合は次で解説する芽だし作業を行います。
芽出し
種芋は芽が出ていないうちに植えてしまうと土の中で腐ってしまうこともあります。さらに里芋は芽が地上に出るまでに約1ヶ月もかかるため、植え付け前に芽出し作業を行いましょう。
芽出しの方法は、3月中旬~4月上旬ごろに土を入れたプランターに種芋を仮植えし、暖かい場所で本葉が2~3枚つくまで育てます。芽が出るまで乾燥させないよう、たっぷりと水を与えてください。
気温が低いと発芽率が悪くなるため、透明のビニールをかぶせるなど保温対策をしましょう。
発芽までに日数と手間を要するので、すぐに里芋栽培をはじめたい方はあらかじめ芽出しされた種芋を選ぶのがおすすめです。
植えつけ方
種芋の芽を上向きにして、深さ5~6㎝の穴を掘って植えつけます。このとき深く植えすぎるとうまく発芽できず、生育不良の原因となってしまいます。
植え終わったあとは芽が折れてしまわないよう優しく土をかぶせ、たっぷりと水やりを行います。
水やり
美味しい芋をたくさん収穫するためには水やりが欠かせません。常に株周辺の土は湿り気のある状態を心がけましょう。
特に気温が上がり始める6月から収穫期までは、土が乾いてしまうと里芋の収穫量が激減してしまいます。里芋は一度水切れを起こしてしまうと、回復するまでに時間がかかるため注意してください。
乾燥対策
里芋にとって乾燥は大敵です。乾燥に弱く収穫量や里芋の品質にも大きく影響するため、対策として藁や抜いた雑草などを株元にひいておきます。
土の保湿・保温対策、雑草の抑制を目的としたマルチと呼ばれる資材を活用しても良いでしょう。
追肥
里芋は栽培期間が長いため、途中で肥料切れしないよう株の生育に合わせて追肥を行います。本葉が5~6枚になったころに一回目の追肥を行い、以降は約1ヶ月おきに与えましょう。
肥料分が切れてしまうと、里芋の味が美味しくなくなってしまうので注意が必要です。
土寄せ
子芋が土から出てしまうと味や形も悪くなってしまうため、追肥と同じタイミングで土寄せを行いましょう。土の量は一回目の土寄せでは5cm、以降は10cmが目安です。
土寄せをしっかりと行い、梅雨明けまでに芋を太く肥えさせることが重要です。
芽かき(わき芽とり)
ひとつの種芋から複数の芽が伸びてきますが、わき芽をそのままにしておくと固く小さい里芋しか育たなくなってしまいます。最も太い芽を1本だけ残し株元から出た小さなわき芽はかきとりましょう。
芽かきは手でひっぱるのではなくハサミを使って行い、切り取った箇所は土寄せの際に埋めてしまいましょう。
収穫
里芋の収穫時期は品種にも異なりますが、10月中旬ごろから収穫できます。葉が黄色くなりはじめた頃が収穫目安で、試し堀りをして芋の大きさを確認してみましょう。
収穫時期は霜が降りる時期と重なるので、必ず天気のよい日に行いましょう。茎を根元から包丁で切り取り、スコップなどで丁寧に株の周りを掘り起こします。
株元を手で持ち上げて土を落とし、風通しの良い場所で1時間ほど芋の表面を乾かしましょう。すぐに食べる場合は親芋と子芋に分けますが、長期保存する場合は親芋につけたままにします。
里芋栽培の失敗事例と対策
里芋が大きくならない
家庭菜園で起こりやすい失敗は、里芋が大きくならないということでしょう。いくつか要因があるので栽培前に参考にしてください。
水の不足
一番の原因ともいえるのが、水不足による乾燥です。水やりは常にたっぷりと行い、株元への乾燥対策も忘れずに行いましょう。
種芋が小さい
小さい種芋だと株が大きく育たず、収穫量が増えない傾向にあります。形の良い大きな種芋で育てましょう。
植え付けが早すぎた
寒さにとても弱く霜にあたると枯れてしまうため、植え付けは十分暖かくなってから行いましょう。
芽かきをしていない
子芋からでてくる芽をそのままにしておくと、子芋に孫芋がつき大きく育ちません。大きく育てるためには、できるだけ早い段階でわき芽を切りとりましょう。
里芋が緑色で味にえぐみがある
日光があたってしまった部分に見られる症状です。里芋が日に当たらないようしっかりと土寄せを行いましょう。
真夏の収穫前に葉が黄色くなりはじめた
本来収穫の時期に葉は黄色くなりますが、まだ真夏のころに変色するというのは乾燥が進んでいるサインです。
葉が枯れてしまうと里芋も大きくならないため、特に気温が上昇する夏場は十分な水やりを心がけてください。
里芋栽培のQ&A
プランターでも育てられる?
里芋はプランターでも育てることが可能です。基本的な育て方は地植え栽培と同じですが、なるべく大きく深型のプランターを利用しましょう。
プランターが小さいと芋の生育が悪くなってしまい、収穫量にも影響してきます。プランターで栽培する場合は、幅70cm、深さ30cm以上あるものがよいでしょう。
株の間を30cmほどあければ2株栽培することができますよ。1株植えの場合は、直径・深さが30cm以上ある植木鉢であれば問題ありません。
どちらで育てる場合も生長に合わせて増し土を行うため、植え付け時は上部から10~15cmほどスペースを空けておきましょう。
連作できる?
連作に非常に弱く、病気の発生に繋がります。同じ場所で育てる場合は、最低でも3~4年は空けましょう。
親芋も食べられる?
子芋や孫芋と同じく美味しく食べることができます。粘りやアクが強いので、皮を向いた後下湯でしてから調理すると良いでしょう。
ほくほくとしたクリーミーなー味わいから、シチューやコロッケなどがおすすめです。
里芋栽培のまとめ
里芋は1株から15個ほど収穫でき、プランターでも育てることができるので、家庭菜園初心者の方にもチャレンジしやすい野菜です。
土の中で長く保存できるので必要な分だけ掘り起こして収穫できるのも嬉しいポイントですね。煮物や汁物、コロッケなどいろいろな料理に活用できますよ。
ぜひみなさんも気軽に里芋栽培を楽しんでみてくださいね!